研究課題/領域番号 |
18K04571
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
岩堀 豊 明治大学, 理工学部, 専任教授 (50358636)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CFRP積層板 / 接着接合 / 接合強度 |
研究実績の概要 |
般空機等の複合材構造接合には機械的接合が多用されているが、構造設計・製造的に非効率である面も多い。一方、接着接合に対する信頼性は十分でない上に、複合材の層間剥離強度以上の荷重は伝達できない。本研究では、木材建築物等の部材端部接合に用いられている組継接合をCFRP接着構造に応用し、CFRP積層板接合部の強度向上を目指す。具体的には、CFRP積層板に対する組継接合内部の形状寸法(組継パラメータ)が、CFRP積層板の継手強度に与える影響や強度発生のメカニズムを明らかにしていく。そのため、CFRP積層板について組継パラメータを検討・設定し、継手強度に関する力学的な関連性について、試験片を製作し強度評価を行うとともに、引張荷重負荷装置付きマイクロフォーカスX線CT装置、構造解析等を用いて組継接合の強度発現メカニズムを明らかにする。 今年度は、昨年度の成果を基に組継接合に関するパラメータを再設定し、試験片の製作を進め強度試験及び破壊後の破壊様相観察を実施した。組継パラメータは、荷重方向に対し縦方向(荷重方向)と横方向(垂直方向)の溝に対するピッチ(溝の数)と、接着深さとし、ラップ長は固定し、溝の幾何条件を変化させた試験片を製作・試験を行い強度特性を取得した。また、破壊した破面の顕微鏡観察を行い、接着破壊の破壊様相を取得し破壊メカニズムの考察をした。 試験の結果、縦方向の組継接合は通常の接着接着と比較し最終強度が2倍近く向上することが確認されたが、溝の加工の方向が荷重に対して垂直な場合(横方向)は強度が全く向上せず、溝加工角部の応力集中によってCFRPの層間剥離が進展してしまうことが明らかになった。今後、縦方向の溝方向の組継効果を明らかにするとともに、強度向上のメカニズムについて断面観察やX線CT装置を用いて解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の成果を基に、組継パラメータを再設定して試験を実施し強度特性を明らかにした。その結果、溝方向によっては、組継効果が出ない場合もあり、荷重と組継の溝方向との関係で注意が必要なことが明らかとなった。一方、荷重方向と同方向の溝を有する組継については、通常のラップシア強度の2倍近くの強度を発現し、この継手方式を適切に用いれば、CFRFPの接着継手として適用できる可能性が示唆された。 一方、破壊した接着試験片の観察から試験片の接着剤の剥離状態が異なっていることがわかり、継手強度の不安定な現象は接着の状態の不安定さによるものである可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
負荷荷重と同方向の組継については強度向上が明らかになったため、この強度発現のメカニズムを詳細に調べていく。強度が向上する場合の破壊起点や組継試験片内部の損傷発生や進展を調べるため、負荷を与えつつX線CTによるその場観察を計画している。また、FEM解析によって、シミュレーションによる組継内部の応力分布を解析し、荷重の伝達や破壊のメカニズムを再現して観察結果との考察を進めていく。一方、昨年度製作された試験片については強度にばらつきがあったため、試験片を再製作し接着状態と強度の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
組継接合の際の接着剤の塗布状況の影響を調べるための試験片製作に充てる。また、試験後の断面観察のための消耗品に充てる。
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