研究課題/領域番号 |
18K04572
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
田中 宏明 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (90532002)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 航空宇宙工学 / スペースデブリ / デブリ除去システム / 金属銛 / Johnson Cookモデル |
研究実績の概要 |
2018年度は,本取り組みの最初の課題として,これまで行ってきた固定された試験片への金属銛撃ち込み試験装置を改修し,自由落下中(固定されていない)の構造への金属銛撃ち込みを行う試験装置を開発,撃ち込み試験を開始した.この試験装置では,電磁石を用いて試験片を保持し,金属銛の射出にあわせて電磁石を切ることで,固定されていない試験片への撃ち込みが可能となる.さらに,電磁石はそれぞれタイマー付きリレーを介した構成としており,電磁石の切り離しタイミングを調整することで,運動している物体への撃ち込み試験も可能としている.このような固定されていない物体への金属銛の撃ち込みは,小型デブリの捕獲を想定した試験であり,従来の試験装置では実施できなかったものである. この試験装置を用いて,衛星構造で広く利用されているアルミニウム合金製の試験片に先端円錐型銛を撃ち込む試験を実施した,この試験を通して次の二つの知見が得られた.まず,固定されていない試験片に金属銛を貫入させるためには,固定された試験片に対するものより,速い撃ち込み速度が必要である.次に,運動している固定されていない試験片への撃ち込みでは,現在利用している先端円錐形銛では貫入後に十分な保持強度が得られないケースがあり,適切な打ち込み速度範囲が狭いことを明らかにした.なお,これらの試験結果は,並行して実施している数値シミュレーションの妥当性確認にも利用する予定であり,現在は数値シミュレーションで用いるモデルの構築にも取り組んでいる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に実施予定であった,自由落下中の構造への金属銛撃込み試験装置の開発はほぼ完了し,多くの試験を実施した.これらの試験により,金属製銛によるデブリ捕獲に関する重要な知見が得られた.検討すべき運動状態が多様なため,撃ち込み試験を完了できてはいないが,多くの試験結果を得ることができており,これらは現在,検討中である多様なサイズのスペースデブリへの金属銛撃ち込みに対応できる数値解析モデルの妥当性確認にも利用できる.また,2018年度には,自由落下中の構造にも適用できる数値解析モデルの構築にも先行して取り組み,目途が得られた状態であり,研究はおおむね順調に進捗している.
|
今後の研究の推進方策 |
研究が順調に進捗していることから,2018年度の成果を基に,2019年度~2020年度にかけて,申請時の予定通り以下の2つの課題に取り組む. まず,多様なサイズのスペースデブリへの金属銛撃ち込みに対応できる数値解析モデルの構築を行う.これは先行研究,および,2018年度に得られた試験結果を基に,多様なサイズのデブリ構造への金属銛撃込み現象を表現できる数値解析モデルとして,"固定された構造","固定されていない構造"に対して,統一的に適用可能なモデルを構築するものである.材料の構成則モデルとしてJohnson Cookモデルを用いた数値解析モデルを作成,すでに検討を進めており,成果が出つつある. その後,次の課題として,構築された数値解析モデルを用いた銛形状の最適化と試験による有効性検証に取り組む.過去の研究,および,2018年度の結果から,金属銛形状がターゲットとの結合特性(必要な撃込み速度や結合強度)に大きく影響を与えることがわかっている.そこで,2019年度に構築予定である数値解析モデルを用いて,多様なスペースデブリに対応できる金属銛形状の検討を行う.検討の結果得られた形状の金属銛を製作し,撃ち込み試験を実施,最適化の有効性を検証する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度には,高額の器材として,光学式3次元運動計測装置を導入したが,本器材の入札を行った結果,当初の予定額より低い金額で導入出来たため,その残額を次年度に繰り越し,2019年度後半で実施する改良した金属製銛の撃ち込み試験に向けた,試験装置の改良,および,試験片に利用する予定である.
|