研究課題/領域番号 |
18K04581
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
村井 基彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (60292893)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 波力発電 / 浮体式 / 発電量最大化 / 列配置 |
研究実績の概要 |
過去の研究では単機のPA-WECにおける適切な制御力が,線形理論の範囲内で解析的に求められることが示されている.本研究課題では発電機の制御力成分を取り込んだ上で,運動方程式との連成から制御力の最適化を検討し,複数のPA-WECの相互干渉と銅損を考慮した最適な制御力係数を数値的に求める手法を提案した.また,その手法を用いて数値計算を行った結果,以下の知見を得た. 浮体列として発電期待値を最大化するには,浮体を等間隔に配列し,浮体ごとに適切な制御力を与えることが有効である.また,浮体数が増えるほどその効果は大きくなる.また,発電期待値が最大値となる浮体間距離は浮体数にほとんど影響されない.その一方で,浮体列としての浮体あたりの発電期待値が最大となるような列配置同士を比べると,その発電期待値は浮体数が増えるほど大きくなる傾向がある. ただし,浮体あたりの発電期待値を最大化するには,適切な浮体間距離で等間隔により多くの浮体を列配置すればよいこと, 浮体数を増やしていくと,その発電期待値の増加傾向は緩やかになっていき,おおよそ10機以上並べれば無限列に近い干渉による増加効果が得られる.さらに,PA-WECの配置の等間隔性に対する感度は決して高くなく,最適な浮体間距離に対して,極端に近接しない(本機では20m以上)距離を保っていれば,浮体間距離にばらつきのある不規則な配置でも最大の発電期待値に対して発電期待値を著しく減少させないこと また, PA-WECの列配置と発電期待値の関係においては,円柱群で観測されるトラップモードのような狭い周期範囲での鋭いピークのような傾向とは異なり,発電期待値最大化に対しての最適な浮体間距離や等間隔性の感度が高くないことが確認でき, PA-WECの列配置には,実用的に十分な許容範囲があることを示せた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題として、浮体式の波力発電システムを想定した場合に、複数の配置によるファーム化によって、発電全体の効率化が図れる。その際に非常に重要となる浮体の配置について、本研究の一部として扱っているが、発電量最大化できる定式化を構築し、さらにそれに基づいた数値解析を実施できている。また、発電量の推定に関しては、規則波だけでなく、波スペクトルを想定した発電量期待値の視点からも列配置の有利性を見出しており、おおむね順調に進んでいると考えらえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗状況から、波スペクトルを想定した中での複数の波力発電システムとしての発電量期待値の最大化とその浮体式発電機の配置の検討は、一定の成果が出ており、課題となる点は、時系列問題における発電量を最大化できる制御力の道程手法である。この点については、すでに現実的手法の提案準備が進んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本件に関する、当該年度中の成果として論文誌への投稿中が数件あり、すでに掲載可とはなっているが請求書の発行が次年度になるもの、および査読に時間を要しているものが発生したことと、本件に関する国際会議での発表のための参加費等について、次年度に回したため。また、コロナウィルス感染予防のために、3月予定していた参加予定のシンポジウムの次年度への延期も発生したため。 これらについては、今年度の成果に基づき翌年度に本研究課題の遂行の上で使用予定である。また、それにより、翌年度の新たな研究進行に必要な予算の確保が出来ていることから、次年度の計画に沿って実施できる見込みである。
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