研究課題/領域番号 |
18K04584
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安東 潤 九州大学, 工学研究院, 教授 (60211710)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 舶用工学 / プロペラ / キャビテーション |
研究実績の概要 |
プロペラの最適設計は、船尾伴流中でプロペラ翼面上に発生するキャビテーションによって誘起される船尾変動圧力に配慮して行われる。その際、プロペラ効率は原型並みで変動圧力を減らしたい、もしくは変動圧力は原型並で、できるだけプロペラ効率を向上させたいといった要求がある。プロペラ効率および変動圧力はトレードオフの関係にあるため、両者を目的関数とする多目的最適化問題とみなすことができる。本研究においては、プロペラ効率と変動圧力を目的関数とする多目的最適化問題を取り扱う。 平成30年度は、749総トン型一般貨物内航船用に海上技術安全研究所において設計され、プロペラ単独試験およびキャビテーション試験の結果が公表されている模型プロペラMP700を原型プロペラとして選定し、改良を行った。そして、改良プロペラの模型試験の結果、設計点付近でプロペラ効率が約2%向上し、キャビテーションによる変動圧力も減少していることが確認された。しかしながら、改良プロペラの翼端付近に有害なバブルキャビテーションが観察されたため、令和元年度も引き続き、MP700を原型プロペラとして再度改良を行うこととした。 平成30年度は、設計変数の一つである最大キャンバー分布を半径方向に3次式で表したが、改良プロペラの最大キャンバーは翼端付近で跳ね上がるような形状となっており、これがバブルキャビテーションの発生と関連があると推察し、令和元年度は半径方向の最大キャンバー分布が翼端において滑らかにゼロとなるような形状とした。そして再度改良プロペラの模型試験を実施した結果、平成30年度と同様に設計点付近でプロペラ効率が約2%向上し、キャビテーションによる変動圧力振幅の1次成分が40%近く減少していることが確認された。なお、バブルキャビテーションは観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロペラ効率と、間接的ではあるが変動圧力と相関のあるキャビティ面積を目的関数とする多目的最適化問題を解く手法の有効性を平成30年度および令和元年度における2度の模型試験により確認できた。 以前開発した2次元翼型用の気泡追跡法をプロペラに適用してキャビティ形状を求め、キャビティ形状から得られるキャビティ体積の時間に関する二階微分値より変動圧力を評価する手法を開発し、複数のプロペラのキャビティ体積および変動圧力の試計算を行った。 以上より、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
気泡追跡法によって求められたキャビティ形状から得られるキャビティ体積の時間に関する二階微分値より変動圧力を評価する手法を開発した、複数のプロペラのキャビティ体積および変動圧力の試計算までは実施済みである。次の段階として、キャビティ体積および変動圧力の計測がなされた青雲丸通常型およびハイスキュープロペラに対して上記手法を適用し、妥当性を検証する。さらに、変動圧力が計測されているMP700プロペラおよびその改良プロペラに適用し、プロペラの違いによる変動圧力の差の大小関係(定性的傾向)が捉えられるかどうかを確認する。 平成30年度および令和元年度に開発した多目的最適化問題を解く手法の目的関数の一つであるキャビティ面積を上記の気泡追跡法による変動圧力に置き換え、再度最適化計算を行う。 プロペラ翼強度については、日本海事協会のプロペラ翼厚に関する規則に従い、最適化計算の中でプロペラ翼厚を制約条件として考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額のほとんどが平成30年度の未使用額であり、令和元年度は計画通りに使用している。 令和2年度は、気泡追跡法による変動圧力評価のために計算負荷がかかることが予想される。したがって、高性能のパーソナルコンピュータ購入のため、次年度使用額を有効に活用する。
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