本研究の目的は、ASVとROVを同時展開し、協調作業させることで船底のリアルタイム観測と異常個所の位置特定することにある。本研究の課題は2件あり、その研究課題と研究成果は以下の通りである。 課題1:受動リンク機構を導入することで、船首から船尾への形状変化に対応し、潮流や波浪に対してロバストなROVの姿勢制御が可能か明らかにする。研究成果として、人工知能の一種である遺伝的アルゴリズムを用いて、ROVの構造と制御系を同時に最適化するためのシミュレーション環境を構築した。動力学シミュレーションの結果、浮力を活かして船底に張り付き、受動リンク機構によって船底とカメラの距離を一定に保つ結果が得られた。 課題2:ASVとROVの協調作業により、潮流や波浪に対しロバストなROVの自己位置推定が可能か明らかにする。研究成果として、まず全方位に移動可能なASVを試作した。このASVは一般的なASVが採用する船型ではなく、石油掘削などに利用されているセミサブマーシブル型の構造を採用した。セミサブマーシブル型は海面における断面積が小さいことから、ASVの姿勢保持に対して波浪の影響が少ないことが確認できた。また開発したASVは駆動力を点対称のレイアウトとしたため、全方位へ移動できることを確認した。次にROVを用いて、実海域における船底及び港湾内の壁面と海底面の撮影を実施した。撮影情報をパノラマ化することで船底や壁面および海底面全体を俯瞰しつつ、細部を確認できる高解像度なデータが得られた。
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