メタン‐空気予混合気におけるパイロット燃料着火方式では,メタン濃度が増加した場合に,パイロット燃料の着火遅れ時間が増加する.これに対し,パイロット燃料の噴射特性(噴射圧力,噴射期間,分割噴射およびその間隔)を変化させることで,パイロット燃料の着火遅れ時間の短縮化の可能性や着火位置の制御等について,実験で検証した.パイロット燃料にはトリデカンを用い,燃料噴射圧力を60および40MPaに設定し,噴射期間を0.5および1.0msに設定した.さらに噴射期間1.0msについては,0.5msずつに噴射期間を2分割し,1回目の噴射終了から2回目の噴射開始の間隔(以下噴射間隔とする)を1.0,3.0,5.0msに設定した.またメタン-空気予混合気の当量比を,0.35,0.55,1.0および空気のみと4条件とした. 噴射期間を固定および分割せずに噴射圧力を変化させた場合,今回の試験範囲では着火遅れ時間に有意差は見られなかった.これに対し着火位置については,噴射圧力が低い条件では,噴霧先端到達距離が短くなるために着火位置は燃料噴射位置に近づく様子が見られた.噴射期間を1.0msとした場合と,さらに噴射期間を分割した場合で比較すると,分割したほうが若干着火遅れ時間は短くなるものの,大幅に短縮することはなかった.着火位置については,高当量比において噴射圧力が低い条件では,燃料噴射位置近傍で着火する様子が見られた. 以上から,噴射特性を変化させたことに対する着火遅れ時間および着火位置への効果は,着火遅れ時間の短縮化への効果は小さいが,着火位置を変える効果は確認できた.
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