研究実績の概要 |
本研究は、微生物機能が海洋環境中でのコンクリート材への耐久性向上に有効であるかについて、その場の微生物活動を活発にするために有機物を添加した試験体を用いて、室内および実際の海洋環境下での暴露・浸漬実験により明らかにすることを目的としている。 2019年度は、昨年度に実環境に設置・暴露した試験体および実験室内の海水水槽に浸漬した試験体をそれぞれ回収し、浸漬前後での試験体の物理化学的な変化とそこに繁茂した微生物叢解析を実施した。 実際の海洋環境に438日間設置した試験体は、有機物の添加の有無に関わらず水セメント比によって表面の劣化が異なっており、いくつかの試料は泥化が顕著であった。マイクロフォーカスX線CTにて内部の状況を確認すると、表面部分での密度の低下がそれぞれ観察され、それらの密度低下の状況は目視での観察結果と整合した結果となった。実験室内の海水水槽に浸漬した試験体についても同様に目視およびCTでの観察と、X線回折(XRD)分析による水和物の同定を実施した。なお、水槽の試験体は浸漬から1,2,3,4ヶ月および約1年後に回収を行なった。水槽の試験体に関しても、有機物の有無に関係なく実環境と同様に水セメント比の違いによって表面の劣化状況が異なっていた。水和物の変化については、浸漬時間が長くなるにつれ、エトリンガイト等の生成が確認され、これらの水和物の生成により劣化が促進したと考えられる。それぞれの試験体に繁茂した微生物叢を16S rRNAアンプリコン解析にて確認したところ、周辺の海水や浸漬前の試験体とは異なる微生物叢を検出したことから、試験体(によって形成された環境)に好んで生育する微生物種を特定することができた。
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