前年度までの研究成果をとりまとめ,施設を効率的に整備するための指針を整理した.具体的な研究成果は以下の通りである. 1.施設が点で表される点的施設,道路のように直線で表される線的施設,および公園のように広がりを持った領域で表される面的施設を対象に,施設の最適な整備量を決定するためのモデルを構築した.まず,利用者から最も近い施設と2番目に近い施設までのアクセス距離分布を用いて,施設へのアクセシビリティを評価した.そして,計画者が目標とするアクセシビリティを達成するために必要となる施設の数・延長・面積を求めた. 2.構築したモデルを山梨県の10市町の図書館,公民館,体育施設に適用し,現状の施設数を評価した.まず,最寄り施設までの距離や人口と面積に基づく施設充実度を用いて,施設配置の利便性・効率性を評価した.そして,施設が少ない自治体に対して施設の相互利用による効果が大きい自治体の組み合わせを,施設が多い自治体に対して最適な閉鎖施設を求めた. 3.病院と診療所のように階層構造を持つ施設も扱えるようにモデルを拡張した.閉鎖の可能性がある下位施設と常に利用できる上位施設からなる階層構造に対し,住民から利用可能な施設までの平均距離を最小にする施設数を求めた. 以上の研究成果は,実際の施設配置に関する意思決定に役立つだけでなく,施設の最適配置を求める施設配置モデルの発展にもつながるなど,施設の効率的な整備に資することが期待できる.
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