研究課題/領域番号 |
18K04609
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西村 悦子 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (60311784)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンテナ港湾 / コンテナ配置 / ターミナルレイアウト |
研究実績の概要 |
コンテナ港湾における意思決定の高度化は、ソフトウェア上のシステム構築に重きを置かれるが、意思決定を複雑にしているのは、ターミナルの立地場所、形状、そこで使用されるリソースの挙動にあり、また不確定要素の多い、船の到着パターンや内陸からのコンテナの到着パターンにも依存する。そこで本研究では、リソースのうち内陸側から到着するコンテナに着目し、コンテナの配置位置決定とターミナルレイアウトと同時に行うハイブリットな意思決定の最適化アルゴリズムを構築する。 当該年度では、内陸からの外来トレーラー到着状況をモデル化し、本船荷役と同時に、内陸側荷役を対象に、コンテナ配置の最適化によって得られるサービス時間で評価するモデルを構築した。また、計画期間内に到着する船の寄港頻度や取扱いコンテナ個数の違いについて実験を行いながら、提案した解法アルゴリズムの問題解決を行った。 さらに内陸からの外来トラックの到着のモデル化するために、参考となるデータが必要となるが、コロナ禍において、現場での観測が困難であったため、ターミナルゲート近くに設置されたWebカメラ情報をもとに、外来トレーラーの到着パターン、混雑状況、コンテナの搬入と引き取りのタイミングについて情報収集し、傾向分析を行った。 またコロナ禍という世界的にイレギュラーな状況が起こっている。そこで、国内主要港湾におけるターミナル利用実態調査も行い、時系列でのバース占有率の変化、前年度と同月との比較をおこなって、岸壁利用状況の調査も行った。 構築したアルゴリズムでは、時々刻々と変化する保管スペースのコンテナ増減を、1期間の長さ(時間メッシュの細かさ)を変化させた場合の計算結果、超大型船寄港で同時に多くの岸壁クレーンを使用し、一度に多くのコンテナを扱う場合も想定した実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まずターミナルの混み具合は、海側なら船の寄港頻度や滞在時間、陸側なら外来トレーラーの到着状況に影響される。そこで、外来トレーラーの到着状況、コンテナ船のターミナル利用実態、外来トレーラーの到着状況のモデル化とコンテナ配置について、検討した内容を報告する。 ゲート前の混雑状況に関する実データの観測のために、一部の港湾ターミナルで設置されているWebカメラ情報を活用することにした。コンテナ搬入のために利用されるトレーラーの到着は、時間帯による混雑ピークはなく、平準化されていることがわかった。また、コンテナ引き取りのためのトレーラーの到着は、朝8時台、11時台から13時台(昼休み時間の前後)に混雑ピークが発生することがわかった。 次に、コロナ禍を例としてイレギュラーな状況下におけるターミナル利用実態について調査し、前年度との比較を行った。ここではバース占有率(=岸壁着岸時間の合計/計測期間日×24時間×60分)について述べる。前年度の同月と比較すると、いずれのバースにおいても寄港隻数に大差がないものの、占有率が低く、滞在時間が短くなっていることがわかった。 さらに、内陸から到着する外来トレーラーのモデル化については、内陸からのコンテナの到着・出発のタイミングとコンテナの取り扱い、空き状況更新のタイミングを整理する必要がある。そのうえで、船から到着するコンテナをグループで扱い、内陸からのコンテナの到着・出発を、グループ内の1番目のコンテナの到着、最後のコンテナの出発で扱うことにした。外来トレーラーの到着は、時刻単位ではなく、単位期間に到着するか否かとして扱うことにした。数値実験では、1期間の長さと期間数、メガシップの寄港有無で比較した。メガシップの寄港で、同時に多くのコンテナを扱う場合に時間が長くなり、1期間の長さの違いでは、大差がないことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度となるため、外来トレーラーの到着パターンを考慮したモデルの解法アルゴリズム検証と数値実験の計算結果の精緻な分析を行う予定である。大きく3つのパートで実施する。(1)前年度収集した外来トレーラーの到着パターンデータを分析し、数値実験で使用できるように加工する。(2)外来トレーラーの到着を考慮したコンテナ配置問題の数理モデルを具体化し、前年度に開発したアルゴリズムの解の精度を明らかにする。(3)レイアウトの違いを考慮したコンテナ配置とレイアウト設計の数理モデルを具体化し、数値実験を行う。 (1)では、収集したデータを整理し、統計分析を行って、内陸からのトレーラーの到着パターンを反映して数理モデルで反映できるように加工する。必要であれば、再度データ観測を行う。 (2)では、前年度は条件にあうパラメータの準備がかなり難しく、これに時間を要した。そのため、定式化に依存しないが大規模問題を解くことができる、ヒューリスティクス解法の提案を行った。本年度は、定式化に依存する解を得るための数理モデルを構築する。前年度に開発した解法と比較を行い、解の精度についても考察する。予備実験を踏まえて、学会発表などを通じて意見交換を行い、改良が必要なら修正を加える。 (3)では、(2)に対しレイアウトの違いを考慮したモデルへ拡張する。レイアウトの違いは、ほぼ同じ場所にコンテナが保管されても、処理時間(サービス時間)の長さが異なるという点で違いを表現する。そのため、代表的なレイアウトを複数想定し、(2)で構築したモデルと解法アルゴリズムで数値実験を行う。最後に数値実験の分析結果をまとめるとともに、今後に残された課題などがあれば整理して、今後どのような研究に発展させるかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず最も大きい要因は、旅費の支出が全くなかったことである。またコロナ禍の影響で、2月以降の海外渡航が難しくなり、同様に、国内の他地域への出張を見合わせた時期があったためである。モデル構築、解法アルゴリズム開発、予備実験などの研究活動については、大きな変更にはなっていない。しかし、学生アルバイト雇用ができなかったため、データ観測と整理が限定的になり、その分の支出もなかった。 このことから、また国内外で行う情報収集のタイミング、意見交換の機会を減らすことになり、予算を多く使用することになる海外出張の機会を減らすことになった。オンライン開催の学会に参加する機会があり、その際の学会参加費の支出があった。 本年度の使用計画は、論文投稿に向けた英文校閲費やオンラインになるかもしれない学会参加費、収集したデータの解析に使用する統計分析ソフト、構築したモデルや実験結果に関連して、情報交換のための国内外の学会出張と現場との意見交換である。関連情報収集と整理には、大学院生ならびに事務補佐員の補助を必要とし、アルバイト雇用費を必要とする。また関連する文献資料の購入も行う予定であり、収集したデータを保存・整理するための保存媒体やファイル類も購入する。さらに、モデル改良のために新たなソフトウェア、関連してモデル構築のための書籍や文献資料も購入する予定である。
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