株式市場における高頻度データの分析が進むにつれて、従来の日次データでは把握できなかった多くの現象が明らかになっている。本研究では、特に取引符号に見られる長期記憶の発生原因に焦点を当て、統計力学のアプローチを用いて理論的な研究を行った。これに加えて、市場で観測される間欠性やマルチフラクタル性といった複雑な現象がどのようにして生じるのかを探るために、異なる取引頻度を持つ市場参加者の相互作用に注目した。そして、取引頻度の低い市場参加者グループから取引頻度の高い市場参加者グループへの投資行動のカスケード構造を仮定することにより、これらの複雑な現象を理論的に再現することに成功した。
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