本研究の目的は,広域的な自然災害発生後に,被災地の被害を最小限にするための道路ネットワークを確保する施策を提案することである.研究最終年度である本年度は以下のことを実施した. (1)新規に供用された高規格幹線道路が発災時における負傷者の救急搬送にもたらす効果を,国勢調査人口統計データと道路交通センサスデータに基づき評価した.新たに供用された片坂バイパス,中村宿毛道路を対象とし,周辺の三次救急医療機関などへのアクセス性の改善状況を到達圏域図によって可視化した.その結果,幡多地域の市町間や遠方の拠点までのアクセス性を高めることができることがわかった. (2)発災後に早期に道路を復旧する計画を検討した.高知県の道路啓開計画を対象とし,「4段階の優先順位別の防災拠点に関する発着点を接続する経路」,「各発着点に含まれる区間に示される被災想定の有無・復旧日数」をデータとして用いた.同一の復旧段階となる被災想定道路のうち,短期に復旧が可能で,より多くの救援ルートとして指定されている区間から優先的に復旧させる手法を提案した.その結果,提案手法がより早期に多くの救援ルートを接続できる可能性があることがわかった. (3)地盤沈下により長期に浸水することが想定される道路の復旧計画の検討を行った.宿毛市を対象として,四国広域道路啓開計画,高知県道路啓開計画,宿毛市長期浸水対策に示されるデータを用い,個々の道路の復旧に要する日数と優先的に復旧すべき区域を考慮した復旧計画を提案した.その結果,防災拠点の属性のみから救援ルートの重要性を決定するのではなく,災害時におけるその拠点への到達可能性も検討した上で優先順位を決定すべきであることがわかった.
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