近年、製造業では競争力強化のためにリードタイムの短縮や短納期化の努力が続けられており、生産計画の段階では高い生産性が期待できるタイトなスケジュールの立案が求められている。しかし、綿密に計画されたスケジュールのもとで生産を実施している際に、機械故障や資材/部品の調達遅れなどの予期せぬ事態が発生した場合、それによる小さな作業遅延が玉突き式にスケジュール全体に伝搬し、大きな遅延を引き起こす可能性が高い。 機械故障や資材/部品の調達遅れに代表される不確実事象はものづくりの現場では日常的に発生し、不可避なものとして認識されている。このため本研究課題では、不確実事象が発生しても現場の混乱のもととなるスケジュールの変更は行わないことを前提に、不確実事象に起因する作業遅延の影響を受けにくいと期待されるロバスト(頑健)なスケジュールを計画段階で策定するためのロバストスケジューリング法の開発に取り組んできた。 不確実事象として機械故障を想定し、まず初年度にはシステム構成が比較的単純なフローショップを対象に、各ジョブの作業余裕(スラック)に着目してスケジュールのロバスト性を数値化する「ロバスト性評価指標値」を提案した。2年目以降は、このロバスト性評価指標をジョブショップ型の生産システムに適用可能なものへと拡張することに取り組んできた。最終年度の令和4年度は、主にジョブショップに対するロバスト性評価指標の改善に取り組み、その有効性を数値実験により検証した。さらに、ロバスト性評価指標のフレキシブルフローショップとフレキシブルジョブショップに対する拡張も試みた。 フローショップとジョブショップに対するロバスト性評価指標に関する研究成果をそれぞれまとめ、論文2編を投稿した(現在査読中)。フレキシブルフローショップとフレキシブルジョブショップについての成果も近日中に投稿する予定である。
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