研究課題/領域番号 |
18K04615
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
井上 寛康 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 准教授 (60418499)
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研究分担者 |
藤原 義久 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (50358892)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サプライチェーン / シミュレーション / 災害 / 並列計算 |
研究実績の概要 |
この課題では,比較的詳細に記録が存在している東日本大震災を用いて,企業の被災の程度とその分布などから直接的な被害を求め,間接的波及をシミュレートし,その結果が災害後の経済指標等の統計と一致するようにパラメータを推定する.また災害の多様なシナリオや過去の災害の再評価を行った。すなわち上記(1)によりパラメータに妥当性を持たせたのちに,今後日本で起きるとされる南海や東海地震,あるいは近年の保護主義により特定の財が輸入できなくなるシナリオなどを国内について検証した.さらに人工的なシナリオによって,直接被害を受ける企業・産業の特性と災害の波及との間にある関係性についても明らかにした.これと同様のことを国際データについても検討した。 さらに詳細には、1.経済センサスデータを結合し、これまで約100万の企業からなるサプライチェーンデータをさらに約100万の事業所データを統合することで、シミュレーターを精細化した。2.企業活動基本調査データを結合し、これまで国内に閉じていたサプライチェーンデータを輸入・輸出まで考慮したデータとすることで、シミュレーターを拡大した。このシミュレーターを富岳上で実施することに成功した。すでに新たなモデルの推計精度の改善が認められ、国際会議AROB2022にて発表し、論文も投稿準備中である。引き続き改善を目指すとともに、東日本大震災時に発生した電力不足を推計に反映させ、南海トラフ地震でもかなりの被害が出ると予測される電力不足の影響についても取り組む準備ができている。また一連の研究で、本年度文部科学省よりナイスステップな研究者(賞)を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では下記の記載となっていた。「比較的詳細に記録が存在している東日本大震災を用いて,企業の被災の程度とその分布などから直接的な被害を求め,間接的波及をシミュレートし,その結果が災害後の経済指標等の統計と一致するようにパラメータを推定する.また災害の多様なシナリオや過去の災害の再評価を行う。すなわち上記(1)によりパラメータに妥当性を持たせたのちに,今後日本で起きるとされる南海や東海地震,あるいは近年の保護主義により特定の財が輸入できなくなるシナリオなどを国内について検証する。さらに人工的なシナリオによって,直接被害を受ける企業・産業の特性と災害の波及との間にある関係性についても明らかにする.これと同様のことを国際データについても検討する。」 上記の実績報告にあるとおり、この通りに実施されたので、COVID-19による計画の順延はあるものの、順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響で遅滞した分の研究を推進するが、当初の計画どおりに推進する。すなわち、災害で損なわれる企業の設備だけでなく流通などインフラを考慮すること,企業が自律的にサプライヤ・クライアントを変更すること,政府が救済措置を取ること,などである.このような災害の詳細化や適応性を取り入れてモデルを精緻化する.そして,データを取り入れながらそれらの妥当性を検討するとともに,災害へのあるべき予防策・対応策についても検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による影響により、当初計画通りに進まなかった分の執行のために、次年度使用額が生じている。
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