研究課題/領域番号 |
18K04616
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
大倉 元宏 成蹊大学, 理工学部, 教授 (30119341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 視覚障がい者 / 交通事故 / 転倒事故 / 事例研究 / ロービジョン者の挑戦的行動 / 普段と異なる状況 / 健常者の周辺未確認 |
研究実績の概要 |
視覚障がい者の交通・転倒事故についての事例収集のための調査票を試作し、それを用いて実際の事故を調査し、その調査票の利用可能性を検討した。 関連文献と筆者らの作成した駅ホームからの転落事例の調査票を基に調査項目を取捨選択した。その結果、事故時の被害者の属性(年齢、職業、視覚障害の程度、歩行訓練など)、事故発生時の道路状況(発生場所、点字ブロックや音響信号機の設置状況など)、事故の経緯(事故形態、移動状況など)からなる調査票が試作された。 試作された調査票を用いて、5名の視覚障がい者を対象に9件の事故事例について一緒に現場に出向き、調査を実施した。その結果、試作された調査票は適用可能であることが判明した。さらに、9件の事故事例は、①ロービジョン者の挑戦的な行動、②普段と異なる状況、③健常者の周辺未確認の3つに分類できた。 ①の事例:被害者はロービジョン者で、事故は私鉄駅前のロータリーで発生した。被害者はロータリーの向こう側にあるバス停に行こうとしてロータリーを外周する歩道を通らず、そこを突き切ってショートカットしようした。しかしながら、歩道と車道を分離している鎖柵を越えようとしたときに足がひっかり右肩から車道に倒れ込んだ。多少、視覚が使えるが故の事故と考えられた。 ②の事例:事故は被害者の自宅のすぐ前の狭い道で発生した。道に出た後、いつものように駅に向かって歩き始めたが、その時に限り進路上に自動車があり、衝突した。被害者は全く車の存在を想定していなかった。 ③の事例:被害者はロービジョン者で、前方の道路を横断すべく歩道上を横断歩道口に向かっていた。その時、左側の横断歩道を渡ってくる自転車を認めたので、右側の路肩に寄って停止し、自転車の通過を待っていた。ところがその自転車のハンドルが被害者の左手に接触し、持っていた白杖も飛ばされた。自転車運転者の前方未確認と考えざるを得ない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
収集された事故事例はデータベースシステムとしてインターネット上に公開することを考えている。そのシステムは事例の入力サブシステムと閲覧サブシステムから構成される。今年度は入力サブシステムの設計を行う計画であったが、調査票の試作と利用可能性の検討に時間が取られてしまい、サブシステムの設計に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
9件の事例調査を経て、調査票に目途がついたので、今後はこれまでの遅れが取り戻せると考えている。本年度は、事故事例のデータベースシステムの開発を完了させ、運用を開始する予定である。同時に、事例の収集も継続して実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度において、視覚障がい者の交通・転倒事故事例のデータベースシステムにおける入力サブシステムの設計を予定していたが、調査票の作成に時間を取られ、サブシステムの設計に至らず、次年度使用額が発生した。
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