研究課題/領域番号 |
18K04616
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
大倉 元宏 成蹊大学, 理工学部, 客員研究員 (30119341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 視覚障害者 / 交通事故 / 転倒事故 / 事故防止 / 事故事例のデータベース |
研究実績の概要 |
今年度の大きな成果は事例データベースシステムの開発がほぼ完了し、運用の準備が整ったことである。本データベースは事例の入力サブシステムと閲覧サブシステムから構成されている。入力サブシステムで調査者が事例の詳細を入力し、閲覧サブシステムでは、さまざまなブラウザーを介してその事例を誰でも閲覧できる。閲覧はPCでも、スマホでも可能で、音声出力機能を有していれば、視覚障害者でもアクセス可能である。さらに、日本語版だけでなく、英語版も用意されている。 交通・転倒の事故事例は2018年度から継続的に収集しており、現在のところ13件の掲載を予定している。各事例では、被害者のプロフィール、事故時の道路状況、および事故の経緯などが図や写真も使ってわかりやすく提示される。閲覧システムのURLは、https://omresearch.jp/road-accident/browse/。 収集された事例はその特徴から、「いつもと異なる条件・状況の存在」、「不慣れな場所」、「ロービジョン者のチャレンジングな行動」「健常者の周囲未確認」あたりに分類できそうである。特に気になるのは、「ロービジョン者のチャレンジングな行動」と「健常者の周囲未確認」に関連する事例である。前者では、「角をショートカットして曲がろうとして電柱の地支線に足を引っかけて転倒した」という事例があった。後者では、「前方からの自転車の接近を認めたので歩道の脇に寄って待っていたら、当たられて白杖を飛ばされ、しかも何の謝罪もなく立ち去られた」という事例があった。前者については、保有視覚を過信せず、白杖による進路の確認もおろそかにしてはいけないことが指摘される。後者では、健常者に対して交通ルールや社会人としてのマナーの徹底を図ることはもちろんのこと、視覚障害の歩行特性や白杖の役割に関して啓発の必要性を痛切に感じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事例データベースシステムの開発がほぼ完了し、運用の準備が整ったが,収集された事故事例が少ない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
データベースシステムに目途がついたので,本年度は事例収集を継続するとともに,当事者を含めてデータベースシステムの存在を広く告知して評価を求め,さらに使いやすいシステムをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
事故事例の収集が想定していたほど進まず,旅費支出がなかった。視覚リハビリテーションにかかわる専門家にさらなる事例の情報提供を呼び掛ける。
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