研究課題/領域番号 |
18K04616
|
研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
大倉 元宏 成蹊大学, 理工学部, 客員研究員 (30119341)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 視覚障がい者 / 交通事故 / 転倒事故 / 事例研究 / データベースシステム |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け,新たに収集された事例件数は5件に留まり,2021年5月末現在で掲載事例は合計18件となっている。ただし,その分,開発側においてシステムの不備な箇所の発見に時間が割け,いくつかのマイナーなプログラムの改修が行えた。 事故事例をその特徴で,「予想しない事態の存在」「不慣れな場所」「リスキーな行為」「健常者の周囲未確認」「その他」に分けると,該当事例数はそれぞれ5,2,3,7,1件で,「健常者の周囲未確認」や「予想しない事態の存在」に属する事例が多い状況であった。「健常者の周囲未確認」では,自動車の後退中や後方側面との接触があった。後方カメラやセンサーにより運転者への警告伝達装置の搭載が望まれるが,これに関しては,2022年5月以降発売される新車については装備が義務化される予定である。旧車についてもオプション等で装備可能とし,補助金等を用意して普及を図る必要がある。動力部の電動化により,自動車はますます静音化に向かっており,この装置の搭載は視覚障がい者だけでなく,すべての歩行者の安全に貢献すると考えられる。また,自転車運転者が障がい者と接触し,白杖を飛ばしたにもかかわず,そのまま去っていく事例も認められた。交通ルールや社会人としてのマナーの徹底を図ることはもちろんのこと、視覚障がいの歩行特性や白杖の役割に関して啓発の必要性を痛切に感じる。「予想しない事態の存在」では,慣れた通行路に一時的に置かれた物に接触して転倒する場合が多かった。慣れた通行路であっても常に白杖を適切に操作して進路の安全を確かめることが肝要である。加えて,物を置く側(健常者)にも配慮が求められる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
事例のデータベースシステムはほぼ完成し,運用を始めることができた。しかしながら,コロナ禍により,事故事例調査が思うようにできず,掲載事例数についてはまだ不足している。
|
今後の研究の推進方策 |
事故事例の収集を継続するとともに,当事者を含めてデータベースシステムの存在を広く告知して,評価を求め,さらに利便性の高いシステムをめざす。
|
次年度使用額が生じた理由 |
事故事例の収集が計画していたほど進まず,旅費と謝金支出がほとんどなかった。視覚障がいリハビリテーションにかかわる専門家にさらなる情報提供を呼び掛けたい。
|
備考 |
2021年2月4日(木)点字毎日新聞(活字版)3面に「交通事故の事例 ネットに,再発防止を目的に公開」という見出しで,本研究において開発・公開された視覚障がい者の交通・転倒事故事例データベースが紹介された。
|