研究課題/領域番号 |
18K04619
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
今泉 淳 東洋大学, 経営学部, 教授 (00257221)
|
研究分担者 |
椎名 孝之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90371666)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 鉄道 / 車両運用計画 / 数理モデル / 最適化 |
研究実績の概要 |
代表者は,実務家に対するインタビューや文献資料による実態調査を行った.そこでは,鉄道事業やその実務に詳しい人々との対話を通じ,各種計画立案の詳細や上位の意思決定の必要性に関する様々な情報を得た.同時に,本研究に関わる可能性がある文献の蒐集に努めた.分担者は,整数計画・組合せ最適化の動向調査を行い,種々の方法の適用可能性や実装可能性に関して検討した. それらに基づき,モデルが構築可能な課題・問題で,計画よりも前倒し可能なものについてはそれを試行的に行い,数値実験を通じて初期的結果を得た.具体的には,鉄道車両に関する二つのスケジューリング問題(車両運用計画作成問題)を扱った. 一つは,時刻表が平日と土・日曜(以下「休日」)とで異なるために起因する問題で,通常平日の時刻表をベースに車両運用計画は作成されるが,休日の時刻表は異なるため,平日の車両運用計画との整合性を保つように休日時刻表に対する車両運用計画を作成する必要がある.そこで,大規模問題に対する有力な方法である列生成法の適用を試み,休日の車両運用計画の作成手順を構築し,複数のケースに対して数値実験を行い,解法の挙動に関して調べた. もう一つは,異なる鉄道事業者が路線を接続しそれぞれの会社の車両が他社線に乗り入れる「相互直通運転」の状況下での車両運用計画の作成問題である.そこでは車両使用料の精算を目的に,各社の車両の他社線内の総走行距離をできるだけ等しくする必要がある.一方,一車両形式の場合や相直でない二車両形式の場合の車両運用計画作成モデルは存在したが,上記の条件を持つ問題のモデルは存在しなかった.そこで,過去の研究の定式化に対する修正を行い,複数の問題例を計算機上で解き,その挙動を調べた. これら方法が確立されれば,実務作業の軽減につながるとともに,各種意思決定を補助する可能性を生むと考える.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己点検による評価としては,その進展は総合的に見ておおむね順調であると考える. ひとつには,比較的早期に,モデルの構築が可能な問題に対してその実装・初期的実験ができたことが大きい.その意味においては,計画以上の進展としての評価も可能である.ただし,それらモデルに対する解法の挙動に関しては,数値実験を通じてさらに詳細に分析する余地はあり,その結果に応じて定式化や解法の修正が発生する可能性はあろう. 一方,30年度の各種調査は,初期的な成果を得る上では十分なものであったが,鉄道実務に関する調査は31年度も継続し,実務家の意見聴取を通じて,計画立案問題の発掘,さらには経営視点からの意思決定に関わる問題意識などを可能な限り把握したい.特に,後者に関しては,30年度において一定の範囲での調査結果は蓄積できたと考えているものの,さらに広く実務家と接点を持てればと考える.その上で,経営視点の意思決定ために数理モデルの検討,また可能であればその試行的実装を考えたい.
|
今後の研究の推進方策 |
31年度は,引き続き,可能な範囲で実務家との接点を持ち,未解決の計画立案問題の発掘や経営視点の意思決定の現状に関して調査を行いたい.文献調査も基本的に継続するが,場合によっては数理技術関係の研究領域以外にも視野を広げる必要があるかもしれないと考える.また,数理技術方面の調査に関しても継続的に行うことは言うまでもない. 一方,すでに初期的成果を提示した二つの問題・数理モデルに関しては,引き続き数値実験を行いつつ解法の改良の方向性を探る,あるいは解法の挙動や計算結果に応じて,定式化の変更・修正などを行い,実用性の観点からの完成度を高めることを指向する. さらに,計画立案問題の発掘を通じた数理モデルの提案やその解法の開発,経営視点の上位の意思決定に関する数理モデルの構築の検討の,少なくともいずれか一方を推し進めたいと考える.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していた調査などを目的とする海外出張を時間的な都合から行わなかったことと,鉄道事業者に対するインタビューも,国内の遠方への出張も含むことを想定していたところ幸運にも都内で行えたこともあり国内出張も予想より少なくなり,旅費としての支出が想定額を下回った.加えて,実装用・数値実験用の専用機材の選定・調達のための時間的余裕がなく,また試行的な実装や実験でもあったため,その実施・実行はとりあえず手持ちの機材で行った.このような原因から次年度使用額が生じた. 次年度使用額は,本格的な実験に備えて専用機材の調達のために充てるとともに,調査や研究成果の公表のための旅費として充当したい考えである.
|