研究課題/領域番号 |
18K04628
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研究機関 | サレジオ工業高等専門学校 |
研究代表者 |
島川 陽一 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10446239)
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研究分担者 |
五島 洋行 法政大学, 理工学部, 教授 (00398950)
宮川 雅至 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50400627)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市数理 / 交通量配分 / 交通量補足型最適配置 / 輸送スケジューリング |
研究実績の概要 |
自動車輸送は鉄道や航空機などの交通手段と比較して、交通量の事前予測が難しく、混雑による所要時間の不確実性が高い。トラック輸送では最短距離や所要時間最小の経路選択ではなく、配送センターへ到着する時間の遅延が最小になる経路選択を行っている。 利用者が最短経路で目的地に向かうと仮定して交通システムは整備されるので、このような観点から交通システムの整備は検討されていない。輸送機械や配送・販売施設、交通調査・交通インフラ・運用コストなどのリソースが限られるという条件のもとで、交通主体が道路ネットワークを介して効率的に移動するには現在の交通に何が必要なのか。この解明が本研究の目的である。 この問題に3つの観点からのアプローチを計画した。 (i) 目的地への予想到着時間からの遅延の原因となる非目的地の通過時間の増加を引き起こす道路ネットワーク構造の解明と効率的なインフラ整備、(ii) 道路ネットワーク全体の交通流動と、輸送時間の不確実性の見積もり、(iii) 輸送時間の不確実性が高いときに、車両と拠点リソースを有効に活用する輸送スケジュールの作成し、効率性の高い輸送を実現する交通状況の分析を行う、というものである。 19年度には以下の研究実績をあげた。(i)についてはロードプライシングのエリアとゴードン課金の観点から道路ネットワーク構造の分析を行った。道路網の形状について都市数理の観点から検討を進めた。(ii)については18年度に定式化した貨物輸送において一般道路、高速道路、休息施設を入れた経路選択問題を発展させて到着リスクを定量的に扱う方法を検討した。(iii)については前年度のリソースの最適配置問題の検討結果をベースに目的地に移動中の輸送が効率的に拠点リソースを使用するという観点から、リソースの配置問題に時間軸を導入するモデルの拡張を試みた。査読論文と国際会議で合計14件の報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各サブテーマには本問題に対するアプローチの難易度から進捗状況に若干の偏りが生じているが、おおむね順調に推移していると考えている。(i)では流出・流入交通量だけでなく通過交通量を適切に評価して、効率的に交通制御が行える道路ネットワーク構造の解明を目的としている。19年度は東京でも実施の検討が進められているロードプライシングを念頭にゴードン課金とエリア課金が道路ネットワークの構造によってどのような特徴を示すのか数理的な検討を行った。また交差点の配置について流出・流入・通過交通からの知見の整理を行った。(ii)の目的は道路ネットワーク全体の交通流動と、輸送時間の不確実性を推計する方法の開発である。輸送時間の不確実性として目的地への平均到着時間と到着時間の分散に着目したモデルの作成を検討している。一般的に利用者均衡配分では日平均の起終点交通量を配分して各道路リンクの交通量を推定する。本研究で検討したいのは道路ネットワーク上の時間で変動する交通流と変動によるリスクである。そこで利用者均衡モデルをベースに時間帯別配分を行うことを考えた。道路ネットワークにおける道路リンクを時間帯別に設定し、ここに各リンクへの到着時間を考慮しながら配分する。このようにすれば時間帯別に各道路リンクの交通量が評価でき、出発時刻ごとの経路選択リスクを評価できる。19年度は簡単な道路ネットワークでの配分実験を行いリスク評価への適用可能性を検討した。(iii)の目的は輸送車両がインフラを利用して、なるべくジャストインタイムで目的地に着く計画を、スケジューリングの手法を応用して作成するもので本研究の大きな特徴となっている。既存の施設を利用するという観点ではなく、どこに施設があれば効率的な輸送が実現できるかという点で配置モデルを検討した。また時間変動する交通流を念頭にモデルに時間軸を導入する拡張を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本助成では計画年度3年目から各テーマを発展的に融合させることを大きな目標にしている。20年度以降はこれらの融合を念頭に研究を推進する。交通流の予測手法は従来土木工学の分野で利用者均衡配分を基礎とする方法が発展し、実務でも用いられている。一方で都市数理の分野では道路ネットワークのグラフ構造から交通現象の解明が試みられている。両者の融合を目指した研究は過去に例がない。本研究では前者の交通流予測手法が(ii)に相当し、後者のテーマは(i)に相当する。大きな研究の推進方策としてはこの2つのサブテーマを発展的に融合させて、最後に(iii)のスケジューリングの手法を取り入れた交通計画の最適化を目指すことを考える。 実施の内容は以下の通りである。 (i)の道路ネットワーク構造を地理情報システム上で展開し、 (ii)で扱う起終点交通量のゾーンと交通量を重ね合わせて空間的な相関を計算する作業である。交通量の配分計算を行い、道路ネットワーク全体の交通流動を推計して、従来手法による交通が (i)の非目的地の通過にどのように影響を与えているか定量的に検討するというものである。この作業は19年度からの継続である。 各サブテーマにおいて20年度から推進する内容は以下の通りである。 (i)は継続して数理モデルの検討を継続する。 (ii)は時間帯別に交通量を配分する手法をベースに得られる交通流動からの時間距離と実際に到着する時刻のずれをリスクとして評価するモデルを検討する。実道路ネットワークで試行する。 (iii)は交通流補足型の最適配置問題を発展させ、施設の配置と輸送計画を同時に考えるモデルを検討する。輸送計画問題は時間的関係、施設の効率性は空間的な枠組みで問題を捉える。現在試行的なモデルが完成しているので、20年度は時空間両軸で交通計画を行うモデルを検討する。
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