研究実績の概要 |
火炎中で鉄原子を放出して鉄原子の負触媒としての作用により燃焼抑制効果を発揮するフェロセンについて消火剤としての使用を想定した実験的検討を進めてきた。 昨年度までで、フェロセンは固体微粒子であり、粉末径が小さいほど燃焼抑制効果は大きいが、一方で粉末径が小さいと実火災では火炎による上昇気流により火炎に届き難くなることが明らかとなった。そこで、フェロセンより消火効果の大きいフェロセン誘導体や他の金属化合物に探索範囲を広げて消火効果を有する金属化合物を探索してきた。 フェロセン誘導体については合成する必要があり、燃焼抑制効果を有すると見込まれるフェロセン誘導体について熱分析や化学種の同定を実施した。昨年度はトリフルオロ酢酸鉄(Ⅲ)、今年度は1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン (DPPF) に着目し、その DPPF に金属塩化物を配位させた錯体である (DPPF)MCl2について研究を行った。置換基を配置することにより、金属と有機化合物との配位結合の結合エネルギーが減少し、火炎中で鉄およびその他の金属の放出が容易となることを狙いとしたものである。 昨年度のトリフルオロ酢酸鉄(Ⅲ)と同様に(DPPF)MCl2としてMをSnおよびZnとした金属二核錯体の合成に成功した。目的の物質が合成されていることについて核磁気共鳴分光法、質量分析、熱重量分析などにより確認できた。(DPPF)ZnCl2 は、フェロセンの2.2 倍、DPPF)ZnCl2 は、フェロセンの2.8 倍の効果を発現することが分かった。
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