自動運転が完全自動化されるまでの準自動運転の間、運転者の役割は「車両状態や周囲の監視者」に変わり、覚醒水準の低下が生じやすい状況となる。前年度は、Locus of Control(LoC)が反応時間や周辺への視認行動に及ぼす影響を、自動運転レベル2を模したドライビング・シミュレータ実験から明らかにすることを試みた。その結果、内的統制者と外的統制者の視認までの時間遅れや反応時間の遅れについて考察したが、視認までの時間などでは個人差が大きく、LoCのみでは説明できない結果もあった。そこで、今年度は文献調査等から原因について考察した。 LoCの「行動をコントロールする要因をどのように求めるか」という考え方の違いと、セルフコントロールの「自身をコントロールし、実際にどれくらい意識し行動できるかどうか」の違いとの2要因が、準自動運転下でのモニタリング中のドライバの行動に関係するモデルを考案した。まず、内的統制者は制御の主体を自身に求める自発的な考えから、セルフコントロールの得手不得手に関わらず、自身をなるべくコントロールしながら適正なモニタリングをするように努めることが考えられる。しかし、行動には現れないが、セルフコントロールの不得意な者はネガティブな気分を伴いながら、従事することが考えられる。一方で、外的統制者は、制御の主体を自動運転に委ねてしまう受け身的な考えから、セルフコントロールが得意な者は、自身をコントロールしようとするけれども、モニタリングに単調感などを感じると徐々に疎かになると考えられる。また、セルフコントロールが不得意な者は、最初から適正なモニタリングをすることなく、見逃しがないように最低限にしか努めないことが考えられる。このような考えは、LoCと反応時間の関係や、内的統制群における心的飽和の個人差や、外的統制群における前半の自動運転中の主体性と視認までの時間の個人差とも符合する結果と推測された。
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