本研究では,単独歩行者と複数歩行者の歩行場面を想定し,その歩行行動を確率的にモデル化することで,歩行者の歩行経路を予測することを目的とした.本研究期間をとおし,主に(1)静止障害物に対する単独・集団歩行者行動のモデル化,(2)移動障害物に対する単独歩行者のモデル化,(3)ヒヤリハットデータを用いた歩行者行動の分析,(4)自転車行動のモデル化,を実施した. (1)静止障害物に対する単独・集団歩行者行動のモデル化:最も単純な場面を想定し,一人の歩行者が静止障害物を回避する行動の計測・モデル化を行い,実データとの比較からモデルの妥当性を確認した.つぎにより現実的な場面を想定し,2人,3人,5人の集団が,障害物(本実験では,路肩の駐車車両)を回避する際の行動を計測した.集団を一つの塊として捉えたときに,その形状変化についての検討を行った. (2)移動障害物に対する単独歩行者のモデル化:より現実的な場面に近づけるために,移動障害物(対向する歩行者・自転車を想定)に対する歩行者行動のモデル化を実施した.前年度に得られた,歩行者および移動障害物の速度と互いの距離の関係に加え,回避行動開始からすれ違いまでの角度変化を考慮したモデル化を進めた. (3)ヒヤリハットデータを用いた歩行者行動の分析:静止障害物および移動障害物に対する単独・集団歩行者のモデルの有効性検証のため,単独歩行者・集団歩行者の障害物回避行動場面の抽出作業を進めた. (4)自転車行動のモデル化:歩行者同様,自転車も交通弱者であり,自転車行動のモデルを構築するためのデータを取得し,障害物回避行動のモデル化を進めた.限定的な大きさの障害物に対し,3種類の速度および進入位置を変えて走行したときの回避軌跡を計測し,確率的な考え方をもとにモデル構築を進めた.
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