研究課題/領域番号 |
18K04640
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
吉野 悟 日本大学, 生産工学部, 講師 (80594788)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | エアバック用ガス発生剤 / 湿度試験 / 熱分析 / アゾール化合物 / 劣化特性 / 経時変化 |
研究実績の概要 |
エアバッグ用ガス発生剤は長期間自動車に搭載されるため、過酷な環境条件に暴露されながらもガス発生挙動が大きく変化してはならいなどの高度な性能が要求される。ガス発生剤の環境条件における化学的安定性の検討を目的とし、アゾール系ガス発生剤の湿度試験を行い、劣化サンプルについて熱分析により熱安定性・エネルギー発生特性の把握を行った。 対象物質は5,5-ビテトラゾールジアンモニウム(BHT)およびアミノテトラゾール(HAT)とし、参考として硝酸アンモニウム(AN)および硝酸グアニジン(GN)を用いた。恒湿恒温槽を湿度85%、温度30℃(H85-T30)、湿度85%、温度85℃(H85-T85)にそれぞれ設定し、サンプル約500 mgを7日および14日間暴露した。暴露前後のサンプルを乾燥し、暴露したサンプルは熱分析に供した。熱分析は密閉セル-示差走査熱量測定(SC-DSC)を用いて、試料量約1 mg、昇温速度5 K/min、測定範囲30-445℃として熱的特性を確認した。 環境条件H85-T85およびH85-T30で14日間暴露したBHTのDSCにおける発熱量はいずれも約8%減少傾向を示した。HATの発熱量は同様に約50%減少傾向を示した。HATは水和物を形成することが報告されており、また発熱挙動の変化も確認されたことから湿度の影響を受けることがわかった。 また、環境条件H85-T85に暴露したGNおよびANのUVスペクトルの結果から、硝酸イオン濃度がいずれも約10%減少していることがわかった。BHTおよびGN、ANの暴露前後のIRスペクトルから顕著な変化は確認されず、HATはアミノ基に由来する吸収に変化が確認された。 これらのことからHATは化学分析および熱分析のいずれの結果からも暴露前後で変化が確認され、湿度の影響を顕著に受けることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度(平成31年度)はサーマルサイクル試験の実施を予定していたが、サイクル試験による予測は複雑であること、および劣化予測のために耐湿試験およびより精度の高い暴露方法および分析手法の確立が重要であることから、試験方法と再現性の確認に注力することにした。対象物質の暴露後の定量分析および熱分析を複数回実施し、データの有効性が確認され、より有益な劣化特性が明らかとなったことからおおむね順調であるという判断に至った。この知見をもとに劣化予測を実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度実施予定の劣化予測のための足りないデータを取得し、反応速度論による予測を実施する。一方で、アゾール系化合物の劣化生生物を定量分析手法から検討し、より精度の高い劣化挙動の予測を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入した試薬を今年度使用したため合成用試薬の購入がなかったことおよび定量分析用ガスクロマトグラム用カラムを今年度は検討せずに、紫外可視分光法により行ったため、使用額がゼロより大きくなった。翌年度にアゾール化合物の暴露前後の定量分析にガスクロマトグラム用のカラムの検討を予定している。
|