研究課題/領域番号 |
18K04643
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
保前 友高 富山高等専門学校, 商船学科, 教授 (30470032)
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研究分担者 |
杉山 勇太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (30711949)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 爆薬 / 爆風 / トンネル内爆発 / トンネル壁面材料 / トンネル壁面構造 / 被害低減 / 小スケール実験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
1.研究の目的:トンネル内で爆薬が爆発した際の壁面による爆発エネルギー吸収メカニズムを解明し,壁面の表面形状や材料と吸収量の関係の定量的な理解を行う。爆発被害低減化の観点から,地下通路やトンネル内で爆発した際に発生する爆風とトンネル壁面の相互作用により,壁面が爆発のエネルギーの一部を吸収するメカニズム解明や定量的な理解は重要である。この問題を解明するため,独自に開発した1g程度の爆薬を使用する室内爆発実験法により,トンネル内爆発の縮小モデル実験を行う。壁面の表面形状や材料を変化させ,トンネル内外の爆風(衝撃波)の減衰過程を評価する。独自に開発した数値解析コードを用いてこの実験データを解釈し,壁面のエネルギー吸収のメカニズムの解明,定量的な理解を行う。 2.本年度の成果:①トンネル内部壁材料の要素実験:本年度は,トンネルの壁・床に周期的な凸部を設けた際の爆風低減効果を評価する実験を行った。低減効果の凸部設置面数への依存性,および凸部の高さへの依存性を明らかにして国際会議を含む3件の口頭発表を行った。また,本研究で使用しているアジ化鉛を主とする特殊な雷管のTNT換算薬量について,計測方法を工夫して評価した結果を論文1報としてまとめ発表した。 ②独自開発の数値解析コード:トンネルの壁・床に周期的な凸部または多孔質金属を設けた際の爆風に関する数値解析を行い,衝撃波の伝播挙動や空気/多孔質金属間のエネルギー輸送現象について検討した。凸部における衝撃波の反射と回折,多孔質Niによる熱伝達が支配的な爆風低減機構であることを明らかにし,国際会議を含む3件の口頭発表を行った。また起爆過程の数値解析手法を導入し,円柱形爆薬の爆風の伝播機構を検討した。起爆過程で生じた軸および半径方向に拡がる爆風が複雑に干渉しながら伝播することがわかり,爆風圧の角度指向性を評価した結果を論文1報としてまとめ発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,最初の2カ年は,研究実施計画に従い,おおむね順調に進展していた。トンネル内部壁材料の要素実験については,最初の2カ年で砂を模擬したガラスビーズ,および多孔質金属による爆風低減効果の詳細な評価を行い,詳細な知見を得た上で論文の発表を行い,ほぼ所期の目標を達した。トンネル内部壁の表面形状の要素実験については,一昨年度と今年度,トンネルを模擬した管の内壁に周期的な凸部を設けた爆風圧計測実験を行い,凸部の数,凸部の高さ,設置面数への爆風低減効果の依存性について調べた。この結果,凸部の数には強く依存せず,高さ,設置面数に依存することを明らかにし,所期の目標に近いところまで到達した。ただし,一部に解釈が難しい結果もあったため,確認のための追加実験を行う予定であったが,コロナ禍による移動制限により実施できなかった。 一方,数値解析に関しては,これまでトンネル内での爆発解析への妥当性が確認されているコードの本研究への適用方法とその妥当性を検証した。その上で,トンネルを模擬した管の内壁に周期的な凸部を設けた爆風圧計測実験を再現した数値解析を進めている。実験と同等の爆風圧分布が得られつつあるが,管形状を決定する種々のパラメータに対する爆風圧低減効果の応答性の理解に至っていない。現在,管内現象の規格化やパラメータスタディを進めており,管形状と爆風低減効果の関係の理解,爆風低減に寄与する物理量の解明に着手している。 以上のことから,本研究課題は(3)やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
トンネル内部壁の表面形状の要素実験について,トンネルを模擬した管の内壁に周期的な凸部を設けた爆風圧計測実験を行い,爆風圧低減効果の凸部の設置面数への依存性への知見を得た。所期の目標に近いところまで到達しているが,これらの実験結果の中には,解釈が難しいものが若干含まれたため,これを確認するための追加実験を行い,所期の目標を達成する。数値解析については,上述のように管形状と爆風低減効果の関係の理解,爆風低減に寄与する物理量の解明や,本研究結果を誰でも利用しやすいように,管形状パラメータを入力すると爆風低減効果を評価できるような式の提案を目指す。 また,次年度は最終年度となるため,成果の公表についても,引き続き重点的に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,コロナウイルスの蔓延による緊急事態宣言等のために移動が制限されたことから,研究代表者が産業技術総合研究所に出張して実験を行う機会が限られた。また,研究成果を発表するため,国内開催の学会へ出席する予定であったが,中止になったり,オンライン開催になったりした。このため,旅費の金額が小さくなった。 次年度は,コロナ禍の状況を勘案しながら,早めに実験計画を策定するとともに,引き続き国内開催の学会での成果発表を計画し,執行する。
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