研究課題/領域番号 |
18K04646
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
木村 祥紀 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター, 研究職 (60636869)
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研究分担者 |
土屋 兼一 科学警察研究所, 法科学第二部, 主任研究官 (90447920) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核種判定 / 機械学習 / ガンマ線スペクトル / 粒子輸送シミュレーション / 放射線計測 |
研究実績の概要 |
核セキュリティ事象の現場初動対応活動において、速やかな事象対応や現場対応者の被ばくリスク低減などの観点から、原因核種の迅速な把握が必要不可欠となるが、測定検出器の性能や測定時間といった制限から従来の核種判定装置では核種判定性能が限定的となってしまう技術的な課題が存在している。本研究では、核セキュリティ事象の現場初動対応活動を支援する技術として、放射性核種の判定を迅速かつ自律的に行うためのハンドヘルド型放射性核種判定装置(RIID)の開発を目的とした、機械学習手法に基づく新しいガンマ線スペクトル解析手法に関する基礎技術の研究を実施する。 令和元年度は、高エネルギー分解能ゲルマニウム検出器の検出器応答シミュレーションによって構築した学習データベースにより、ニューラルネットワーク法に基づく機械学習アルゴリズムを学習させ、崩壊系列核種(ラジウム、トリウム、ウラン)や環境存在核種(カリウム40)を含む10核種を対象とした核種判定手法を開発し、標準線源やウラン鉱石等を測定したスペクトルを対象とした核種判定の性能試験を行った。その結果、本研究で開発した核種判定手法により、環境放射線を含む測定スペクトルから非常に高い判定性能で単数または複数組合せの線源核種を判定できることを実証した。また鉱石等の測定データにより、崩壊系列核種の判定とウラン濃縮度の推定も可能であることを実証した。令和元年度のその他の実績として、中・低エネルギー分解能検出器による測定スペクトルを対象とした、Wavelet変換や畳込みニューラルネットワーク法による特徴量抽出手法について検討し、特徴量抽出手法と機械学習アルゴリズムを組み合わせた核種判定手法の研究開発を進めるとともに、中・低エネルギー分解能を持つ検出器を購入し、核種判定性能試験を行うために標準線源等の測定スペクトルデータを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高エネルギー分解能検出器による測定スペクトルを対象とした機械学習アルゴリズムに基づく核種判定手法について、シミュレーションにより構築したデータで学習させたニューラルネットワークアルゴリズムにより、非常に高い判定性能を持つ核種判定手法が開発できることを実証し、崩壊系列核種等を含む10核種を対象とした核種判定アルゴリズムを開発した。本研究で開発した手法は、ゲルマニウム検出器と同程度のエネルギー分解能を有する検出器であれば、検出器の種類を変更した場合や判定対象となる核種数を増やした場合でも高い性能で核種判定が可能な汎用性の高い手法であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、中・低エネルギー分解能のガンマ線検出器による測定スペクトルを対象とした核種判定手法の開発を目標とし、Wavelet変換等を使用した特徴量抽出手法と機械学習アルゴリズムを組み合わせた核種判定手法の検討を進める。また、本研究の成果を学術論文等で広く公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中・低エネルギー分解能検出器を対象とした核種判定アルゴリズムの性能試験のための測定スペクトルを取得するために購入した中・低エネルギー分解能を有する小型検出器について、当初予定額からの購入差額が生じたために次年度使用額が発生した。 当該助成金については、次年度において機械学習アルゴリズム及び特徴量抽出手法の開発を行うためのコンピュータ及び解析用消耗品の購入、研究成果発表のための旅費及び学会参加費等に充当する予定である。
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