研究課題/領域番号 |
18K04647
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
岡本 勝弘 科学警察研究所, 法科学第二部, 室長 (40356176)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 引火性液体 / ガソリン / 漏洩 / 蒸発速度 / 火災 / 爆発圧力 / リスクマネジメント / 車両火災 |
研究実績の概要 |
ガソリン保管場所等におけるリスクマネジメントには、床面に広がる漏洩ガソリンの蒸発拡散性状や着火後に想定される爆発被害の大きさを事前に予測する必要がある。本研究は、多成分系液体燃料であるガソリンの重量蒸発率を蒸発の進行を表す指標としてその物性変化をモデル化することにより、貯蔵容器から漏出したガソリン蒸気の拡散挙動を予測する手法の開発を目的とする。 平成30年度は、販売時期や地域、種別の異なる10種類の自動車ガソリンを試料に選定し、調整した蒸発変性ガソリンの10~40℃における蒸気圧を測定した。蒸気圧測定結果を解析することによって、任意の温度・蒸発率における蒸気圧予測に必要な蒸気圧定数をそれぞれ導出し、床面ガソリンの蒸発拡散現象のモデル化を行うことによって、蒸発速度や周辺に形成されるガソリン蒸気濃度を予測するガソリン蒸気拡散モデルを提唱した。 令和元年度は、ガソリンが貯蔵容器等から漏洩した場合に適用可能な蒸発拡散モデルを提唱した。また、ガソリンの床面漏洩実験を実施し、ガソリンの床面への漏洩性状を観測するとともに、漏洩ガソリンの蒸発拡散実験及び着火実験を実施し、蒸発拡散モデルによる予測結果との比較を行うことによって、提唱モデルの検証を行った。 令和2年度は、予測モデルにより得られたガソリン蒸気濃度から、着火時の爆発圧力を予測することによって、床面ガソリンに起因する爆発被害の評価手法を提唱した。さらに、提案モデルを活用して、水成膜泡消火剤を応用したガソリン燃焼抑制剤の定量的な抑制効果の評価を行った。 令和3年度は、ガソリン貯蔵容器として自動車燃料タンクに着目し、車両火災時に燃料タンクから漏出するガソリンの火炎の影響による隣接自動車への延焼拡大評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 当初想定していた成果 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、延期となっていた第13回国際火災科学安全シンポジウムについては、4月末にオンラインで開催され、これまで3年間の研究成果(貯蔵容器から漏洩したガソリンの蒸発拡散挙動の予測モデル・ガソリン蒸気着火時の爆発圧力及び爆発被害の予測手法)について、発表することができた。 (2) 当初想定していなかったが副次的に(あるいは発展的に)得られた成果 ガソリン貯蔵容器として自動車燃料タンクに着目し、車両火災時に燃料タンクから漏出するガソリンの火炎をモデル化することによって側面方向への放射熱流束を予測する手法を提案し、隣接自動車のタイヤ及びバンパー可燃物の着火特性と比較することによって、隣接自動車への延焼拡大評価を行った。 (3) 当初想定していたが得られなかった成果 原動機付自転車を取得し、火災時における燃料タンクからのガソリン漏洩性状について確認する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、実験計画が遅滞し、実験実施に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、本来、研究期間が平成30年度~令和3年度までの4年間の研究課題であったが(国際学会の開催延期に伴い、1年期間延長)、新型コロナウイルス感染症の拡大により、実験計画の一部に遅滞が生じ、1年間の再期間延長を申請したものである。 5年目(最終年度)となる令和4年度は、延期となった原動機付自転車を用いたガソリン漏洩実験を早期に実施し、取得データについて研究発表を行う。 さらに、提案したガソリン蒸発拡散モデルを実務に適用することを見据えて、CFD技術を用いた拡散挙動予測手法についての検討も行う。CFD技術による予測手法については、妥当性の検証を行いながら、試行錯誤法により最適な計算条件を決定する。 原動機付自転車燃料タンクからのガソリン漏洩実験の実施については、研究協力者の岩下友安、市川俊和、山﨑宏樹及び藤原英之が担当する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、実験計画の一部に遅滞が生じ、次年度使用額が生じたものである。 令和4年度については、次年度使用額のうち、延期された学会への参加費として10千円、研究成果発表用の国内旅費として40千円、実験実施にかかる消耗品費として50千円、論文掲載料として50千円を支出する予定である。
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