本研究は、過去の積雪期地震時の被災と対応の実態を解明し、これら積雪寒冷地特有の自然条件・社会条件を反映した震災軽減支援システムを構築するとともに、防災対策の提起を目的とする。3年間に亘って計画され、主な成果は以下の通りである。 研究計画初年度の平成30年度と2年目の令和元年度は、過去の豪雪地帯の積雪期(12月~3月)に発生した地震被害、太平洋側で発生する巨大地震での日本海側の雪国における地震被害について、各種被害報告、新聞記事などを収集・整理し、冬の地震、特に積雪下の地震防災を考える上で参照すべき被災事象、問題点を明らかにした。また、豪雪地帯横手市を中心とした秋田県内の住宅について、夏期と冬期、屋根の雪下ろし前後の住宅の振動特性実測調査を実施し、建物の卓越周期の変化を明らかにした。さらに、地盤・建物・道路データベースを構築し、マルチエージェント手法を導入して、屋根雪や堆積雪、建物倒壊の状況から、道路閉塞や避難行動をシミュレーションする被害想定モデルを構築し提案した。 最終年度は、過去の地震被害の文献調査を継続し、流行性感冒(スペイン風邪)大流行下において豪雪地帯で発生した1918年11月の長野県大町地震について被災と対応を整理した。また、自然条件として屋根雪荷重による住宅の冬期振動特性の知見を加え、社会条件として避難行動や除雪などソフト面の対応も考慮した積雪寒冷地のための震災軽減支援システム構築し提案した。さらに、モデル都市として横手市および秋田市を選び実証実験を行った。
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