本研究では、現代リスク社会における大きな特徴でありながら災害リスクマネジメント全体では着目されてこなかった、幾層にも及び且つ入手可能な知識だけでは対応しきれない“Deep Uncertainty”(「深い不確実性」)に焦点を当て、「深い不確実性」と意思決定過程や多様なステークホルダーを含む市民社会との関係性に着目し、リスク公共政策または防災政策における「深い不確実性」のマネジメントの在り方について研究を進めてきた。この研究過程の中で、「深い不確実性」が奇しくも世界全体が目下直面している「コロナウィルス感染症拡大(パンデミック)」危機にも大きく具体的に現れた。このことから最終年度は特に、南海トラフ地震などの地震を中心とする大規模災害や気候変動のケースに加えて、このパンデミックのケースも「深い不確実性」への対応を検証する上で対象として研究を進めた。特にこれまでの研究過程の中で構築してきた、システム分析を踏まえた各ケースに見られる「深い不確実性」の特徴とレジリエンス思考やアプローチを取り入れた独自のマネジメントの思考枠組みを、事例研究を通して得られた実際に照合することによって、その有効性を検証した。さらにその枠組みを用いたワークショップでの協働ワークや、国内外の学会や研究会での同枠組みに関する意見交換、さらにアンケート調査を通して、その枠組みを更新した。これらを踏まえ、「深い不確実性」対応のためのレジリエンス思考・アプローチを基盤にしたマネジメント・実践ツールを磨き上げ、主要ステークホルダーを含む市民社会にそれを敷衍した。
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