研究課題/領域番号 |
18K04659
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山中 亮一 徳島大学, 環境防災研究センター, 講師 (50361879)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 津波解析 / 避難可能性 / グリーンインフラ / 数値流体力学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,津波からの避難可能性を高めることを視点とし,社会的受容性を有する都市内インフラにより津波遡上過程を制御する手法を明らかにすることを目的にしている. そのためにグリーンインフラの活用を視野に,平常時は環境機能を有し,発災時には津波遡上の制御・減衰効果を発揮するような構造物と都市構造の提案を行うことを目的にしている.そのために令和2年度では主に次の課題に取り組んだ. (1)津波遡上に対するグリーンインフラによる減災効果の評価 津波解析モデルの空間分解能を10mメッシュから1mメッシュに向上させ,津波,高潮,気候変動による海面上昇の複合災害を考慮した数値シミュレーションを実施した.海浜,海岸堤防,松林で構成されたハイブリッドインフラを事例にインフラ機能評価を行なった.課題として松林などを粗度係数の分布を変えることで評価しているが,その妥当性について,更なる検討が必要であることが示唆された.また,津波襲来時の避難シミュレーションを構築し,今後の避難解析のためのワークフローを確立することができた. (2)津波に対する減災機能を有するグリーンインフラの提案 都市内の構築物の津波に対する強度を変えた津波浸水シミュレーションを行い,数値的検討を行なった.その結果,海側から一定距離の構築物の耐波性を強化すれば,背後地にある都市における津波到達時刻を遅延させることが可能であることを見出した.ただし現実の都市構造をモデルに解析を行なった段階であり,その一般的な条件設定に対する効果の把握については今後の課題として残された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に基づき数値解析の作業フローの確立を進めており,この点については計画通りであるものの,実際に津波や避難の解析を行なう中で,学術的もしくは社会動向の進歩があり,研究の論点としてより深い内容にまで踏み込む必要が出てきた.例えば,グリーンインフラの防災機能については,社会実装を考慮した仕様の表現方法の確立や,避難解析においても高齢化が進む地域において避難完了まで動き続けるエージェントの現実との乖離などである.このような,解析と現実との乖離を埋めなければ研究としては成立しないものと考えており,総合的にやや遅れているとの判断に至った.
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年延長し,次のことに取り組む. (1)津波解析:これまでに構築した1mメッシュの解析モデルを用い,津波浸水深と津波到達時間を評価対象とし,都市内の強化すべき領域を明らかにする.ここでの強化の意味するところは,建物の堅牢化や海岸林などの拡大などである.また,確率津波の考え方に基づく検討も合わせて行なう. (2)避難解析:これまでに構築した避難解析モデルをベースに,(1)の津波浸水解析の結果を入力し,避難行動に対する効果を検討する.この際に,現実的な制限(体力や判断力)を考慮し,より精度を高めることを目指す. (3)研究成果を査読付き英文誌に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)感染症対策業務などにより研究時間を確保できず,現地調査や考察と成果の取りまとめに若干の遅延が生じたため. (使用計画)主に調査旅費と英文論文の投稿料などに用いるが,最終年度に必要となるデータ保存用の消耗品などの支弁も行なう.
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