研究課題/領域番号 |
18K04661
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
大槻 知史 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 准教授 (40399077)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 行動変容モデル / 自己効力感 / 働きかけ / 認知的プロセス / 高知 / 南海トラフ巨大地震 / 行動的プロセス / 防災の気づき(awareness) |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、prochaskaのTTM理論の事前防災行動への援用モデル(大槻,2018)を基にした市民向け行動変容プログラムの効果検証を行った。 南海トラフ地震に対する家庭内での事前防災行動の実施を獲得目標として、無関心期から関心・準備期への行動変容のトリガーである「意識の高揚」「感情的体験」「環境の再評価」「自己の再評価」および関心・準備期から行動維持期への行動変容のトリガーである「コミットメント」「刺激の統制」「強化マネジメント」の機会を組み込んだワークショップ型防災プログラムを設計・試行し、効果検証を行なった。
具体的には、高齢者世帯30世帯を対象にしたプログラムを実施し、 1)「参加前」「参加直後」「参加1ヶ月後」の3時点で災害リスク認知、防災行動の追加実施意向、防災活動の追加実施状況を定量的に比較した。結果、全体の89.2%が何らかの防災行動の追加実施が確認されたが10.8%は防災行動を追加実施していなかった。面接法を用いた分析を行なったところ、防災行動を追加実施した群は災害イベントが自らに与える影響を想起できており、また、対処のための事前防災行動を実施可能であるという自己効力感が高い傾向にあった。一方で、防災行動の追加実施が確認されなかった群は、災害が自らに与える影響を十分に想起できておらず、防災を様式化した行動として捉える傾向にあった。また災害リスク認知の認知的不協和の解消のために、自らの客観的認知からは優先度の高い防災行動を選択する層も存在した。 これを踏まえ現行プログラムの改善点として、「災害イベントが自らに与える影響の想起(感情的体験、環境の再評価、自己の再評価)」、自己効力感の担保と行動実施のための「コミットメント」「強化マネジメント」に焦点を当てる必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で効果検証ワークショップの実施が困難な状況であったが、定性調査を含めた分析により、効果検証及び防災行動の実施の阻害要因、促進要因の仮説的整理が実施できたため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究の最終年度として下記を実施予定である。
1)昨年度の試行プログラムの検証結果を踏まえたプログラムの再設計、2)改善プログラムの効果検証(前後比較及び対照群プログラムとの比較)、3)プログラム普及のための達成条件の同定と導入戦略の提示
なお、新型コロナウイルスの状況によっては、オンライン実施を前提としたプログラムの再設定や、新型コロナウイルス感染症対策を組み込んだプログラムの導入を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う研究スケジュールの変更により、次年度に予算を繰り越す必要があった。 これを踏まえ、次年度は本年度から延期した効果測定実験の追加実施及び検証に予算を使用する。
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