研究課題/領域番号 |
18K04662
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
友清 衣利子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (30346829)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 強風災害 / 災害リスク予測 / 飛散物 / 風圧 |
研究実績の概要 |
過去の台風での被災住家に対する悉皆調査のアンケート結果から得られる,強風被害連鎖の実例に対して,新たに被害連鎖モデルを策定し,より確度の高い被害連鎖モデルと,これを利用したフラジリティ曲線を提供することによって,災害リスクマネジメントに寄与することを目的とする。 令和元年度は,2018年台風21号による大阪での強風被害および2019年台風15号による千葉県内での強風被害の分析を行った。2つの台風通過後の現地調査によって個々の住宅の特性や被害状況を把握し,調査結果をもとに強風によって被災した住宅周辺の建物密度や隣接する建物の被害状況や風向,飛散物の発生状況との関係を分析した。強風の風速,つまり風圧による被害は建築年代の古い瓦葺の住宅に多く発生していることが明らかとなった。強風による外装材の飛散は,周辺の比較的新しい住宅への被害をもたらしている可能性が高いことが示唆された。 2018年台風21号による被害の詳細分析では,台風の強風下で飛散物による被害を受けた二次被害住宅の風上には,風速によって外装材に被害を受けた一次被害住宅が多いことを確認した。また,建物密度の増大に伴い,地域内の住宅被害数は増加する傾向が見られた。ばらつきが大きく,明確な相関関係は得られないものの,周辺建物からの飛散物の発生が,建物密集地域での被害拡大をもたらしている可能性を示した。 前年度の研究実績では,風上方向の土地の開放度と強風風圧による被害との関連が示唆されたが,今年度は建物密集度の増大に伴う飛散物被害の拡大が示唆された。土地の閉鎖程度すなわち,建物密集度は,飛散物被害の拡大につながる一方,強風風圧による被害の低減につながる可能性がある。つまり,被害要因別の被害分析が重要である。 令和元年度に入手した情報をもとに今後,被害拡大シミュレーションの方法を精査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年の台風の被害に対し,詳細な悉皆調査の事例を収集することができた。 本年度に当初予定していた被害連鎖モデルの構築とシミュレーションは十分に行うことができなかったが,研究期間中に新たな強風被害が発生した場合には,被害調査と事例の収集をすることを当初から予定していたため,おおむね順調に進展していると考えている。 過去の台風の被害事例との比較をするための,近年の住宅特性に関する基礎情報を収集することができたので,より現状に対応した被害推定を行うべく研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
強風下での被害の様相に関する情報の蓄積が進んだので,強風下での飛散物の飛散距離やバラツキ等の飛散特性のシミュレーションを行う予定である。 当初,開口部の破壊に伴う室内圧変化のシミュレーションも予定していたが,近年の被害事例によれば,開口部破壊に伴う室内への強風の吹込みと室内被害は見られたものの,構造骨組への被害は多くなく,強風風速と風圧および飛散物による被害拡大が顕著であった。そのため,飛散物による被害拡大を重点研究課題とすることとしたい。 最終的には強風風速と,風圧被害および飛散物被害の発生割合を想定して,住家被害率と被災程度をシミュレートし,新たに蓄積した台風被害の現状との比較をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大のため,2月3月の研究発表に関する出張がキャンセルとなったため。
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