過去の台風での被災住家に対する悉皆調査のアンケート結果から得られる,風圧による 強風被害とそれにともなう飛来物によって生じる被害連鎖の実例を精査し,より確度の高い被害連鎖モデルを提案することによって,災害リスクマネジメントに寄与することを目的とする。 最終年度は,2018年台風21号による大阪での強風被害および2019年台風15号による千葉県内での強風被害の結果をもとに,強風の風圧による被害と飛来物による被害を分類し,その被害の特徴を精査した。強風風圧による一次被害(以下,一次被害)が生じる住家は,比較的建築年代が古く,瓦屋根を有するものが多かった。また,被害の発生個所は屋根が最も多かった。一方で,飛来物による二次被害(以下,二次被害)は住家の構造的特徴によらず,あらゆる年代の住家で生じることが分かった。被害の発生個所は屋根に限らず,外壁や窓ガラス,シャッターなどの開口部にも生じていることが分かった。 一次被害は個々の住家の構造特性の影響を受けるだけでなく,周辺環境の影響を受けることが指摘されているため,被災住家周辺の建物密集率,被災建物戸数,隣接建物との離間距離,海岸からの距離と被害との関係を整理した。建物密集率と1次被害との関係は明確にはならかったが,風上方向の被災建物数が多いと被害率はやや増大する傾向が見られた。風上側被災建物からの二次被害が拡大要因の一つと考えられる。また,隣接建物との離間距離が大きいと一次被害の被害率が増大した。風上に隣接建物がないため直接強風にさらされることで,被害が生じるためと考えられる。 これらの個々の影響因子を用いて,被害発生因子の分析を行ったところ,屋根葺材,建築年代,隣接建物との距離が1次被害拡大への寄与率が大きいことが分かった。
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