緊迫感のある発話と文字情報の組み合わせが高齢者の明瞭度に与える影響を調査した。発話方法2種類(通常発話した音声、緊迫感を持たせて発話した音声)と、音声提示前に文字情報を提示する方法 3種類(提示なし、音声のターゲット語と一致する文字、音声のターゲット語と一致しない文字)を組み合わせた 6 条件を実験で使用した。2種類の発話方法で録音した音声には、公共空間を模擬した雑音と残響を付加し、24名の高齢者に対して聞こえたターゲット語を回答させる聴取実験を行った。その結果、音声と文字情報が一致した場合に、緊迫感のある音声による有意な明瞭度改善が得られた。一方で、文字情報の提示なし・音声と文字情報の不一致の条件では、明瞭度が非常に低く緊迫感のある音声と通常発話した音声間に有意な差は見られなかった。また、予想通り音声と文字情報が一致する条件の方が、それ以外の2条件よりも明瞭度は有意に高くなった。同じ刺激を使用して若年者に行った実験結果と比較すると、高齢者では明瞭度が大きく低下し、特に音声と文字情報が一致しない条件では若年者と高齢者の差が顕著であった。
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