研究課題/領域番号 |
18K04667
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
山本 吉道 東海大学, 工学部, 教授 (70366087)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 津波被害 / 高波被害 / 洗掘 / 吸出し / 底質の中央粒径 / 底質の均等係数 / 底質の乾燥密度 / 浸水予測 |
研究実績の概要 |
1) 今後30年以内に南海トラフで巨大地震の発生する確率は70%であり、レベル2の巨大津波が堤防を越流することを前提に、粘り強い堤防を整備することが要求されている。それゆえ、面的防護による防災施設計画・設計を、低コストで実施できる手段として、林や構造物による低減効果や洗堀を考慮出来る津波の浸水数値モデルを開発した[土木学会論文集B2(2009)等を参照]。また、津波による洗堀問題で、今まで検証計算から決めていた漂砂量係数を、底質の中央粒径、均等係数、乾燥密度を指標に算定図から簡単に推定できる方法を提案し、岩沼海岸の堤防と命山周辺の洗掘予測に適用した[土木学会論文集B2(2018)等を参照]が、実験データを追加して算定図の適用範囲を広げ、今年6月のISOPE国際会議で発表予定である。さらに、CSG堤防、命山、海岸林などが存在する浜松海岸に適用した結果を今年度中に発表予定である[開発した数値モデルのプログラムとデータを“http://www.ev.u-tokai.ac.jp/yamamoto/index.htm”で公開中]。
2) 極浅海域の堤防や護岸は、長時間作用する高波によって前面洗掘と裏込め材の吸出しが生じ、これらによる堤体内の空洞化から破壊に至る場合が非常に多い。それゆえ、越波量と裏込め材吸出し量による堤体破壊の判定図、前面水深と入射波高による最大前面洗堀深の算定図、外力・堤体断面・裏込め材の各諸元による吸出し量算定式を提案した[土木学会論文集B2(2009,2015,2016)等を参照]。その後、CADMAS-SURFを改良して、任意断面形状の堤防・護岸に対する吸出し量と堤体内の空洞の経時変化を、鉛直二次元で精度良く予測できる数値モデルを開発出来た[土木学会英語論文集(2018)等を参照]。現在は、2017年度開発した三次元数値モデルの精度向上で努力している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 津波による洗堀の予測に際して、実測データの再現シミュレーションによって決定していた漂砂量係数を、底質の中央粒径、均等係数、乾燥密度を指標に簡単に推定できる算定法を検討していたが、今回、実験データを大幅に追加して、広い範囲で使える算定図を公表出来た。これらの算定図と我々が開発した津波浸水・地形変化の予測数値モデルを、土堤、CGS堤防、命山、海岸林、建築物の存在する海岸に適用することで、より現実的な条件下で堤防、命山、海岸林、堀などによる多重面的防護の施設計画・設計を低コストで合理的に実施出来る方法を提案出来た。それゆえ、目標の70%を達成したと判断出来る。[WEBページ“http://www.ev.u-tokai.ac.jp/yamamoto/index.htm”で、今までの研究成果と本数値モデルのプログラムとサンプル・データを公開中]
2) 高波による極浅海域や砂浜上の堤体破壊は、大きな波ほど沖合で砕波することから、強い波力に対する堤体の力負けより、砕波後の波の繰返し作用による堤体前面の洗掘や裏込め材の吸出しが主原因である場合が多いことから、吸出しを考慮した堤防・護岸安定性評価法や、三面張り堤防・二面張り護岸からの裏込め材吸出し量算定モデルについて検討していたが、今回、任意外力、任意断面形状の堤防・護岸、裏込め材の任意諸元に対する、吸出し量と堤体内の空洞の経時変化を予測出来る数値モデルを、土木学会英語論文集(2019)等に発表出来た。ただし、三次元数値モデルでも、コンクリート・ブロック被覆式護岸でも、精度の良い結果を得られるように改良する課題が残っているので、目標の達成率は30%程度と見なせる。
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今後の研究の推進方策 |
1) 津波防災関連では、底質の中央粒径、均等係数、乾燥密度を変えた実験データを追加し、漂砂量係数を推定出来る算定図の信頼性をさらに高めて、現地海岸への適用例を増やす。また、構造物の天端が高いために越流水が顕著に剥離する場合は、従来の平面二次元数値モデルで対応出来ないため、この場合の洗堀量を算定出来る実験式を提案していた[土木学会論文集A1(2013)等を参照]が、CADMAS-SURFを改良して洗堀の経時変化を予測できる数値モデルの開発も試みる。
2) 高波防災関連では、任意外力、任意断面形状の堤防・護岸、裏込め材の任意諸元に対する、吸出し量と堤体内の空洞の経時変化を精度良く予測出来る鉛直二次元数値モデルを開発できた。三次元数値モデルについては、二年前に開発していたものの、計算精度が悪かったので、堤体内の過剰間隙水圧と流速の補正実験式を組込んで、精度向上を図る。さらに、コンクリート・ブロック被覆式護岸にも適用できるように、本数値モデルの改良を試みる。
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備考 |
上記Webページでは、津波による地形変化予測数値モデルのプログラムとサンプル・データ一式を公開しております。
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