研究課題/領域番号 |
18K04670
|
研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
水谷 夏樹 大阪産業大学, 工学部, 教授 (50356036)
|
研究分担者 |
小笠原 敏記 岩手大学, 理工学部, 教授 (60374865)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 津波 / 底面せん断応力 / 非定常性 / 運動量損失 |
研究実績の概要 |
本研究は,街区を流れる津波の予測精度を上げるため,マニング則に基づいた底面せん断応力モデルに代わる新しい評価モデルの構築を目指すものである. 2019年度は3つの目標を持って研究を実施した.1つ目は,2018年度から続く底面せん断応力の直接測定の試みである.2018年度から計測器の改良を続けているが,計測器には底面せん断応力のほかにモーメントも同時に作用することから,これを切り分けることが困難な状況が続いている.現在は接触型のセンサーを用いているが,非接触型のセンサーを用いるなどして現在も改良中である. 次に,水平床に桁を設置し,それを乗り越える場合の津波の挙動についてPIV解析を行った.津波水位の1/10~1/3程度の高さの桁を設置することで,それまで水平方向流速が支配的だった流れ場に対し,桁を乗り越えるための鉛直方向流速が発生する.これらの流速が発生することで失う水平方向運動量を底面せん断応力に換算することで,桁高さと運動量損失との関係について検討を行った.これらは街区全体を粗度として扱う場合に,街区を通過することで流下方向以外の速度成分が発生し水平方向運動量を失うため,これらを底面せん断応力に換算する必要があることから,検討を行っているものである.現状では一般化できるところまで結論を得られておらず,水路横断方向の流速に対する検討も必要であることから,引き続き解析を行っていきたい. 最後に,2018年度に水平床を伝播する非定常段波流れのPIV解析を行ったことから,これを利用して一次元の非定常運動方程式を差分化し,時空間分布を持つPIV解析データを直接適用して,解析区間の平均底面せん断応力の推定を試みた.解析結果は,マニング則や摩擦速度,レイノルズ応力から求められたものと同じオーダーにはなった.しかし,負のせん断応力が発生することから,これについて原因を検討している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
底面せん断応力の直接測定が研究の大きな柱であり,当初考えていた計測器で直接計測が可能となる予定だったが,これに苦戦している.計測板に作用する水平力を直接測るセンサーを利用していたが,水平方向のせん断応力だけでなく水の自重によるモーメントが計測されてしまうことから,これらをデータ上で切り分けることが難しい状況にある.計測器の設計をもう一度検討し直し,非接触の変位計を用いるなどして,水平方向の力のみを取り出すことで対応する予定である. 一方,街区における底面せん断応力の評価は,水平方向以外の速度成分の生成による運動量損失で関係づけられると考えられる.これに加え,時空間の流速データを得られるPIV解析結果から,運動量方程式を解くことで速度場から底面せん断応力を評価できると考えている.これらのことから,底面せん断応力の評価方法に関しては,概ね順調に進展していると判断できる.
|
今後の研究の推進方策 |
底面せん断応力を直接測定する機器の開発については,前年度の課題を改良したものの,せん断応力とともに,モーメントが同時計測されることが避けられず,データ上でこれを切り分けることが難しい.これについては,接触型のセンサーによる計測は困難であると判断し,非接触型のセンサーへの置き換えを検討している. 街区を流れる津波に対して底面せん断応力を評価するには,街区の特徴を何らかの係数で置き換える必要がある.これまでは,これがマニングの粗度係数となっていた.街区を通過する際に生じる底面せん断応力は,通過時に失う運動量と関係があると考えていることから,流下方向以外の流速成分を発生させる要因に対して,街区をパラメタライズする必要がある.その一環として,桁を乗り越える段波流れについて検討を行っているが,これらの検討を通じて街区を特徴づけるパラメタライズについて行っていきたい. これらの検討と併せて,現地データの作成についても行っていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究費の残高がわずかに生じたのは,調整を行わなかったためである.未使用額はわずかであるため,次年度経費と合算して使用する.
|