研究課題
本研究でこれまでに得られた単結晶を用いた結晶構造解析を行った。まず、Al-Pd-Ru系3/2近似結晶に対してRuをCrで1at.%だけ置換した試料の単結晶X線構造解析を行い、10%を切るR因子を達成した。また、Cr置換を行わないAl-Pd-Ru系3/2近似結晶の構造解析をアップデートし、上記と同程度のR因子を達成した。これらの2種類の3/2近似結晶は同型構造であるが、結晶構造の詳細を比較したところ、Cr添加に伴う化学的無秩序性の増大が軽元素(Al)サイトのスプリットなどの構造乱れを誘起したことが分かった。この結果は、Cr添加による有意なエントロピーの増大が、3/2近似結晶における融点の低下や原子半径からは説明できない格子膨張の要因であることを示唆している。一方、前年度より執筆を進めてきたCd-Mg-Y系およびCd-Mg-Er系1/1および2/1近似結晶の構造解析に関する論文を4月に投稿し、7月に出版された。また、Cd-Mg-Ce系における1/1近似結晶の400℃における相形成挙動の調査を進めた。Cd57-86Mg0-29Ce14-15という広い組成領域で1/1近似結晶の形成が確認された一方で、Mg濃度の増加とともに格子定数があるところから急激な増加を見せ、それとともにPn-3からIm-3への対称性の変化が示唆された。さらに、Cd65Mg20Ce15の組成で得られた単結晶の結晶構造解析を行ったところ、空間群Fd-3をもつ1/1近似結晶の2倍周期超構造であることが分かった。後者の構造はCd-Eu系1/1近似結晶で過去に報告されたものと同型構造だが、Ce関連化合物としては初めて形成が確認されたことになる。一方、Cd-Mg-Ce系1/1近似結晶の対称性がMg濃度によって変化する点については、構造相転移または組成の異なる構造異形の両面から更なる調査が必要である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Acta Crystallographica Section B Structural Science, Crystal Engineering and Materials
巻: 77 ページ: 638~648
10.1107/S2052520621006715
固体物理
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