研究実績の概要 |
本研究計画は、近年注目を集めている磁気スキルミオンを発現する物質のバラエティを拡げるために、メカニカルアロイング法によるスキルミオン物質合成法を確立することを目的としている。本年度は前年度から継続して、ボールミルを用いたメカニカルアロイング法により、2元系B20型TMGe ( TM= Cr, Mn, Fe, Co)合金を作製し、B20型構造が得られる詳細な形成条件を調べた。その結果、合成条件に依存してB20相の形成が確認でき、いずれのTMの場合においても、高圧合成を経ずともボールミルによって単相性の高いB20相が得られることを確認した。種々の温度における熱処理実験により、得られた合金の熱的安定性および結晶子サイズを評価した。熱処理温度に依存して、結晶性が改善し結晶子サイズが大きくなることを確認した。高圧合成法で得られた試料のバルク磁性を再現し、メカニカルアロイング法が高圧合成に代替する手法であることが示された。一般に、メカニカルアロイング法により作製した合金は微細結晶粒となるが、熱処理によってB20相の結晶性を改善でき、結晶子サイズを制御できることが示された。さらに2元系の結果に基づいて、3元系合金におけるB20型合金の作製を試みた。上記2元系のすべての混晶系、全てのx組成においてB20相の形成を確認でき、3元系に対してもメカニカルアロイングの有効性が示された。格子定数が置換元素量に依存して系統的に変化していることから、仕込み組成通りに元素置換した一連の試料作製に成功した。
|