研究課題/領域番号 |
18K04680
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
武田 雅敏 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30293252)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱電変換材料 / 金属六ホウ化物 / ナノ結晶 / 複合組織 |
研究実績の概要 |
本研究では,金属六ホウ化物の熱電特性向上を目指し,低温合成法によりナノ結晶を合成し,その表面に化合物を形成することで組織の粗大化を抑制することが可能か否かを明らかにする.研究項目は大きく分けて「ナノ結晶の低温合成」「ナノ結晶表面への化合物層形成」「焼結体の作製と熱電特性評価」である.平成30年度は「ナノ結晶の低温合成」「ナノ結晶表面への化合物層形成」に取り組んだ. ナノ結晶の合成方法として溶融塩法を選択し,CaB6の合成を行った.原料であるNaBH4とCaCl2を共晶組成のアルカリ塩(KCl+LiCl)に混合し,800℃に加熱することで溶融したアルカリ塩中でCaB6を合成した.冷却後,副生成物などを水,酸で除去し,ほぼ単相のCaB6が得られたことをX線回折測定により確認した.X線回折ピークはブロードな形状をしており,これはナノメートルオーダーの結晶子サイズであることを示している. 得られたCaB6をAlまたはMg融液中(800℃)で10時間保持し,粉末表面に金属との化合物層の形成を試みた,冷却後に金属を酸で除去して得られた粉末には,X線回折測定で酸化物,水酸化物が検出されたが,CaB6が主相として存在していることを確認した.ホウ素と金属(Al又はMg)の化合物はX線回折測定では検出されなかったが,表面分析では粉末表面にAl又はMgが検出されており,薄い化合物層が形成されている可能性がある.Alと反応させたCaB6のX線回折ピークは鋭い形状に変化し,結晶子サイズが増加したと考えられる.一方Mgと反応させた試料のX線回折ピークは反応前と同様にブロードな形状をしており,ナノメートルオーダーの結晶子サイズが維持されている可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶融塩法により合成したCaB6ナノ結晶をAl,Mg融液に浸漬することで,表面にAlまたはMgを含んだ層を形成することに成功しており,当初の予定通りに研究が進んでいる.また,Mgと反応させた試料ではナノメートルオーダーの結晶子サイズが維持されていると考えられ,組織の粗大化の抑制につながる結果と期待される.以上より,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
焼結体の作製にはより多くの試料が必要となるため,溶融塩法によるナノ結晶合成条件の見直しを行い,より収率の高い合成条件を検討する.また,初年度の結果では得られた粉末が凝集しており,均一な金属皮膜形成に好ましくない.これを改善するためにボールミルなどのプロセスを加えることを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は当初の想定より順調に試料合成が進み,分析・解析に予定よりも重点をおいたため,原材料などへの支出が予定より少なくなった.次年度は合成条件の見直しを行うため,より多くの原料や部材への支出を計画している.
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