本研究の目的は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の一種で材料表面の電位や仕事関数をナノスケールで観察できるケルビンフォース顕微鏡(KFM)に、強度変調した光照射を組み合わせることで、半導体材料内部におけるキャリアの動的挙動を高分解能でマッピングする手法の確立を目指すものである。本研究は、以下のフェーズ1、2に従って実施する計画となっている。 フェーズ1:変調光照射機構と変調光応答成分抽出回路の既存KFM装置への組込み フェーズ2:各種半導体デバイスにおける表面電位光応答マッピング 本年度は実施計画のフェーズ2において、酸化チタン薄膜上に金のパターンを蒸着した光触媒デバイスに対しての検証を行った。KFMにおいて静電気力による振動の零点を得るようサーボをかけたDCオフセット電圧を外部に取り出し、その中から変調光に対応した周波数成分をロックインアンプで増幅・抽出する構成としたシステムにおいて、試料を構成する酸化チタンのバンドギャップ値3eVより大きな光子エネルギーに対応した波長320nmの光をチョッパにより変調して照射しながら、試料の表面電位の光応答成分を、形状、表面電位の絶対値と同時に2次元描画した。 その結果、表面に酸化チタンが露出した領域において、変調光に対応した信号が現れた2次元像が得られた。変調光に対する応答は比較的低周波の100Hz以下で大きかった。また、酸化チタン上に金が蒸着された領域においては、光応答が見られないことが確認された。
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