昨年度は、ECAPを室温で行っていたが微細化による高強度化は実現できなかった。本年度は、低温(273K)でECAP加工を施した純Znの機械的特性と変形機構を調査した。圧延材(粒径: 90.9μm)に1 pass ECAP加工を施すことで平均結晶粒径が15.8μmに微細化した。2 Pass材以降は緩やかではあるが微細化し続け、4 Pass材の平均結晶粒径は12.2μmになった。そのため、ECAP加工温度を下げることで粒径を微細化することが可能だった。1~4 Pass材は、結晶粒が微細化したにも関わらず、降伏応力は変化しなかった。FIBによって作製した格子線を表面に有するECAP材を用いた観察から純Zn ECAP材は室温でも粒界すべりが活動することが分かった。また、粒界すべりの全伸びに対する寄与率は、変形初期では粒界すべりの寄与率が高く、変形後期では寄与率が低いことが分かった。変形初期の寄与率が高いことから粒界すべりの活動開始応力が降伏応力と考えることが出来る。また、変形後期では粒界すべりの寄与率が低く転位すべりが支配的である。ECAP材の引張変形中には底面すべりと二次錐面すべりが活動していることが分かった。底面すべりはCRSSが低いため活動が活発であった。一方、1~4 Pass材で、結晶粒の微細化とともに、二次錐面すべりの活動が活発になる傾向を示した。また、二次錐面すべりは粒界付近で観察された。結晶粒が微細化しても二次錐面すべりのすべり線が観察される範囲が変わらないため4 Pass材の結晶粒中を占める割合が1 Pass材よりも高くなった。二次錐面すべりの頻度と結晶粒を占める割合が高くなったために最大応力が低下したと考えられる。引張試験を207Kで行った結果、延性が大幅に低下し、脆性的に破断した。また、引張試験後の試験片表面を観察した結果、粒界すべりが活動していないことが明らかとなった。以上の結果から、亜鉛の力学特性は、粒径と粒界すべりの制御が非常に重要であることが明らかとなった。
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