研究課題
1984年のWebster等によるホイスラー合金Ni2MnGaのマルテンサイト変態(M変態)の発見以来、本物質は強磁性ホイスラー合金のプロトタイプとして基礎研究から新機能材料の開発に向けて多くの研究がおこなわれてきた。本研究の目的は、この三元系合金の組成や圧力を変化させることで特異な構造変態のメカニズムを明らかにし、低温に留まっている構造変態点を室温近傍へ上昇させ、次世代の磁性形状記憶・超磁歪・磁気冷凍材料の実用化への指針を得ることである。2021年度の主な研究実績は、「強磁性ホイスラー合金Ni2MnGaの圧力誘起構造相転移の発見」である。2020年度までの実験室での高圧X線回折測定では、回折プロファイルの分解能が不足し、圧力誘起構造相転移の有無を判別できなかった。そこで大型放射光施設SPring-8での一般研究課題として応募し、採択後の2021年7月に当該実験施設にて大阪大学・極限科学センターの研究グループと協力して測定を行った。圧力媒体として現在最も静水圧性の高い水素を用いることで、世界で初めてNi2MnGaの圧力誘起構造相転移を観測することに成功した。結晶構造解析を進め、高圧力相の結晶構造同定することができた。これまでNi基ホイスラー合金の物性研究は元素置換や組成変化をベースに実施されてきたが、これらの手法では格子欠陥や不純物効果などの副次的効果を伴い、M変態や大きな磁歪を伴うプレM変態の微小な構造や物性との関連を明確にすることは困難であった。今回、圧力を連続的に制御することにより、格子定数・原子間距離や結晶構造と、電子状態や磁性との直接的な関連性について重要な知見を得ることができた。今回の成果を2022年度中に論文としてまとめ、公表予定である。
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Journal of Alloys and Compounds
巻: 871 ページ: 1,10
10.1016/j.jallcom.2021.159480