バナジウムセラミックス系に関し,熱電変換系,2次電池正極活物質系,相関電子系,量子スピン系の研究を推進した. (1) 熱電変換系:非調和型Cuイオン振動を示し,高い熱電変換性能を持つβ'相CuxV2O5に関し,Cu-Li,Ag置換等の結果から熱電能の高温極限は,基本的に相関効果により決定されることを示唆した.熱電性能の向上には,非金属相-金属相境界近傍の電気伝導性と結晶内トンネル席に位置するドナーイオンの乱雑効果を定量的に見極める必要があることがわかった. (2) 2次電池正極活物質系:複合結晶型α相CuxV4O11(2<x≦2.33),超格子型β相CuxV4O11(1<x<2)に加え,Liドープに伴う相転移により2次電池の高容量化が困難とされてきたV2O5等の充放電特性の元素置換効果を評価したが,顕著な改善は見られなかった. (3) 相関電子系:(a) 新正極活物質Li9V3(P2O7)3(PO4)2およびLi脱離(充電)相の物性から,1イオン軸対称異方性を持つXXZモデルにおけるxy面磁性の理論を構築した.(b) 重い電子的振舞いを示すLiV2O4スピネルに関し,インコヒーレント金属相(T>T*~20 K)において混合原子価イオンモデルおよび金属電子系の高温帯磁率に関する一般的理論を構築した.次にLi挿入(放電)相Li2V2O4の物性からLiV2O4がMott絶縁体近傍に位置することを実証した.さらに5 K以上のコヒーレント相の電気抵抗率がPlanckian散逸モデルで説明されることを示した.またコヒーレント相の熱電能から,Planckianモデルの特徴の一つである,抵抗率の緩和時間がFermi準位上の状態密度に依存しないことを明らかにした. (4) 量子スピン系:γ相LiV2O5の1次元的磁性に関し,実際には鎖間相互作用が非常に大きいフラストレーション系であることを示した.
|