研究実績の概要 |
二価カチオンを含む二元系酸化物について、第一原理計算のnsc-dd法を用いてイオン化ポテンシャル(IP)および電子親和力を求めた。その結果、原子の大きさ(原子あたり体積の三乗根)の逆数とIPの間にほぼ線形の相関が得られることが判明した。酸化物では価電子帯の上端はOの2s状態の位置で決まってくるが、この2sバンドの中心位置も、原子あたり体積の三乗根の逆数とほぼ線形の相関があった。ただ、同じ結晶であっても、表面のとり方によってはIPに2eV程度の幅があることも判明し、表面の計算を行わずに水分解光触媒をスクリーニングする際の一つの限界とみられる。[Hinuma et al., Phys Rev. Mater. 2, 124604 (2018)]。なお、通常の第一原理計算で行われるGGA法はバンド端の位置が実験値2と大きくずれる一方、ハイブリッド汎関数を用いると実験値に近い値が得られるが計算時間が数桁多くかかることが知られている。nsc-dd方法はGGA法より少し多い計算量で、ハイブリッド汎関数を使用するのとほぼ同等の結果が得られる。 また、30種のバンドギャップを有する二元系酸化物の表面について、電子親和力と酸素脱着エネルギーについて、ある程度の相関が見られることを示した。酸素脱着エネルギーはH2等の小分子吸着パターンと吸着エネルギーに強く影響することが判明したため、光触媒表面での反応を制御する際にこの値の考慮を要する。[Hinuma et al.,J. Phys. Chem. C. 122, 29435 (2018)]。
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