研究実績の概要 |
本研究では、極めて銅酸化物超伝導体と結晶構造・電子的舞台がよく似ている2物質において、キャリア注入・圧力印加などにより徹底的に銅酸化物と近い結晶構造・電子的舞台設定を作り銅酸化物でなくとも高温超伝導は実現可能なのか?という疑問に答えることである。取り上げる物質はLn4Ni3O8、Ln2PdO4である。 1.Ln4Ni3O8 銅酸化物超伝導体を完全に模倣するためにはキャリア量調整が必要である。2つあるNiサイトの一方のみへの選択的元素置換によるキャリア量調整を試みた。本年度はNiサイトにCo, Cuをドープした物質についてXAFSを用いた局所構造解析実験・解析を行った。X線回折実験による精密構造解析も行いドーピングサイトの特定を試みた。XAFSの予備的な結果では2つのNiサイトにランダムに置換している結果を得たが、X線回折実験の結果を基にしたマーデリングポテンシャルの計算ではNi(1)サイトを選択的に置換する結果となり両者の間で一致を見なかった。今後はより精密なXAFSやX線回折の実験が必要となる。またXAFS実験からドーパントの価数を測定できるが、これによれば、まだ超伝導化に必要なCo, Cuの置換量に達していないことが判明し、より置換量を増やす合成方法の最適化か、別のドーパントが必要である事が分かった。本系で超伝導が発現するか否かは今後の課題として科研費課題21K04638へと引き継がれた。 2.Ln2PdO4 本物質の合成をメカニカルミリング法で行う際の容器素材が混入する問題が解決されなかったため、NaCl-NaFフラックスによる合成を行った。この合成法ではNaFからのF-がO2-を置換することも期待され超伝導化に必要なキャリアドーピングが成される。本合成法により純良な試料を合成することが出来た。キャリア量を適切に調整して超伝導化を目指すのは今後の課題となった。
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