研究課題/領域番号 |
18K04703
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岸本 堅剛 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (50234216)
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研究分担者 |
赤井 光治 山口大学, 国際総合科学部, 教授 (20314825)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱電材料 / クラスレート化合物 / 電子構造 / キャリア伝導 / 伝導経路 |
研究実績の概要 |
1.タイプ2クラスレートCs8Ba16Ga40Sn96のバンド計算:クラスレート化合物の中には原子欠損を有するものがある。そういう物質では欠損がキャリア伝導に影響を及ぼす。表題物質について欠損が作る準位を調べた。Sn欠損1個あたり3本の局在準位をバンドギャップ内に形成する;これはp軌道由来である。もう1本の準位を作るが,それはs軌道由来でエネルギー的に低く,価電子帯の中に存在する。これはキャリア伝導には影響しない。 2.新規タイプ2クラスレートNa-Ba-Ga-Snの合成:現時点ではタイプ2のK-Ba-Ga-Snクラスレートが最高のキャリア移動度を有する。キャリア移動度に対する内包原子の影響を調べるために,この派生形である表題クラスレートの合成を試みている。フラックス法により試料体が得られるようになり,初期的な特性評価の段階である。 3.新規タイプ1クラスレートNa8Ga8Ge38の作製と熱電特性:これは前課題16K14420からの発展である。前課題では多谷構造に着目していたが,キャリア移動度の観点からも有望な熱電材料と予想されることがわかった。焼結体試料を作製し,その熱電特性を評価した。従前の理解では,アルカリ金属内包化合物は高移動度に繋がらないと思われていた。しかし,Naの場合は,従前のKなどの場合とは状況が異なることがわかってきた。キャリア移動度に関しては,Baなどのアルカリ土類金属の場合と同等である。内包原子の原子軌道のエネルギーの違いが関係しているようだ。 4.タイプ1クラスレートBa8M16Ge30(M=Al,Ga,In)のバンド計算の再考:タイプ2の対照物としてタイプ1クラスレートのバンド計算を行っている。以前の計算では見落としていた知見が得られている。クラスレートのホスト格子上に存在するIII族原子Mの影響を調べた。その種類や原子配置は電荷密度分布やキャリア伝導経路を大きく左右する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では,熱電クラスレート化合物におけるキャリア伝導を支配する電子構造について理解しようとしている。主にこれまでの電子構造計算によって,その大体のイメージをつかむことができた。それに,解析の仕方も一通り,身についた。
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今後の研究の推進方策 |
このまま計画通りに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中に,試料体の防酸化のため,不活性雰囲気中におけるホール測定の必要性が生じた。その整備を始めたが,微少電圧計測用の電圧計を購入するにはその時点で予算不足であった。残予算を繰り越し,次年度の予算と合わせて,当該電圧計を購入する。
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