研究課題/領域番号 |
18K04705
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高橋 亮治 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (80292663)
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研究分担者 |
佐藤 文哉 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 講師 (00709488)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 半導体 / シリコン / シリカ / パターニング / カーボンナノチューブ / 多孔質膜 |
研究実績の概要 |
前年度に成功したシリコン単結晶上にNi触媒層とシリカパターニング層を形成しカーボンナノチューブ(CNT)をパターン成長させる方法について、Ni触媒層の均質性・シリカパターニング層の構造制御法について検討を進め以下の成果を得た。 1.Ni触媒層はコロイダルシリカとニッケル・クエン酸錯体の溶液に界面活性剤を加えスピンコートすることによりNi粒子径制御・シリコン基板との結合性の高い膜の生成に成功した。コロイダルシリカを加えることでシリカパターニング層を再現性良く作製することが可能となった。 2.シリカパターニング層は、ケイ素アルコキシドと有機高分子を共存させた溶液へのディップコートにより生成した。パターニング構造は膜中の乾燥過程で進行する相分離によって成長することが確認でき、高分子の重合度・濃度にくわえエタノールによる希釈率などによってサブミクロンから10μm程度のサイズ範囲で制御可能であることが確認できた。使用する高分子の分子量と濃度、基板との濡れ特性に依存して様々なパターン構造を形成できることも確認できた。 半導体基板上にウェットプロセスで多孔質膜を作製して、半導体生成のパターニングに用いるという手法は報告例が少なく、本研究の成果は新しい材料合成法として重要と言える。 また、陽極酸化によるアルミナ多孔質膜作製においても、シリコン上のAl膜に対して陽極酸化によって多孔質構造を成長することに成功した。今後Al膜厚の最適化を進め、目的構造の作製を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、シリコン単結晶基板上でのシリカパターニング膜の構造形成過程を明らかにした。有機高分子を含むケイ素アルコキシド溶液を加水分解の後に基板にスピンコートすると、乾燥の進行とともに、ケイ素重合体と有機高分子の濃度が増加して相分離が進行する。この時、基板との濡れ特性のため、シリカを主成分とする相が基板とよく濡れて高分子相が円形の細孔となる。スピノーダル領域で相分離が進行すると真円に近いサイズの揃った円形細孔が分布するパターンが得られ、高分子濃度により細孔径が制御できる。バイノーダル領域ではサイズが不ぞろいな小さな円形細孔が形成し、臨界組成付近では真円から外れた細孔が生成する。基板との濡れ特性を制御することで相互連続構造も生成可能である。また、高分子の分子量を下げて相分離時の粘度を小さくすると、長周期の相互連続構造が成長することも確認できた。これらのパターン構造のまま、CNTの成長が可能であることを実験的に確認できた。 アルミナパターニング膜の合成についてはシリコン上に金属アルミニウム層を形成し陽極酸化によって数十nmの細孔が生成することが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
シリカパターニング膜の生成とCNTのパターン成長については成果の公表の準備を進める。また、ケイ素アルコキシドによるシリカ膜作製に加えて化学処理に強いチタニアやアルミナでの膜形成の検討を進める。 膜厚を正確に見積もるための方法の検討を進めている。多孔質膜のため光学的な手法では密度が正確に出せないため正確な値を出せない。具体的には、FE-SEMによる直接観察でルーチン化した操作で膜厚を見積もるための方法を検討している。また、 陽極酸化による多層膜作製(AO膜)については、シリコン基板上へアルミニウム金属膜を生成し、このアルミニウム膜の陽極酸化によって相分離によるパターンより微細な細孔を有する多孔質アルミナ膜の生成ができることを確認した。今後は、アルミニウム膜の膜厚を制御し多孔質アルミナ膜がシリコン基板まで貫通するような構造に制御する条件の検討を進めている。また、他大学および学内研究者と共同研究を模索し、パターン化した多孔質膜を有するシリコン基板上での半導体のエピタキシャル成長の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画の窒素吸着装置の保守は申請後採択されるまでの間に、装置が完全に使用不可の状態となり、平成29年度内の予算でメーカーにオーバーホールを含むメンテナンスを依頼したことで、装置の状態が良好となり、予算での執行が不要となった。前年度は未執行分の予算と令和元年の予算を合わせて、粉末X線回折装置のメンテナンスを実施することを予定していたが、使用可能な予算額がメンテナンスに必要な見積額を超えてしまい1年見合わせた。一方でX線回折装置の不具合をメーカーとの電話のやり取りによる自主整備で解消できたことから3年目は薄膜用のアタッチメントの調整に絞ってメンテナンスを依頼する。 薄膜アタッチメントを利用したX線回折測定を行えるようになると、薄層の膜の結晶構造を調べることが可能となるため、本研究を強力に推進することができるようになる。
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