研究課題/領域番号 |
18K04706
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西堀 麻衣子 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (20462848)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | Ba-Ti酸化物 / ポリマーブラシ / 表面修飾 / サイト選択性 / グラフト密度 |
研究実績の概要 |
TiO2、BaTiO3およびBaTi2O5粒子に対して同一条件下でポリマーブラシ修飾を行い、得られたポリメタクリル酸メチル(PMMA)の分子量および熱重量測定から求めた修飾量から単位面積あたりに存在する高分子鎖数(グラフト密度chain/nm2)を算出した。その結果、ポリマー鎖の修飾量が基材に応じて異なることがわかった。粒子表面上でのブラシ形態をコアシェル型構造モデルを用いて評価したところ、BaTiO3では準希薄ポリマーブラシ構造を、BaTi2O5およびTiO2では濃厚ポリマーブラシ構造を形成しているとみなされた。 それぞれの基材に対し調製条件と粒子表面でのブラシ形態との相関を検討したところ、BaTiO3およびBaTi2O5では、弱塩基条件下での重合開始剤(BHE)固定化反応時間に応じてグラフト密度が変化し、ブラシ形態を制御できることがわかった。一方で、TiO2については、反応時間を変化させても一 定のグラフト密度を保っており、ブラシ形態の制御には至らなかった。以上のことから、基材組成はグラフト密度に影響することが明らかであり、基材表面と重合開始剤との相互作用が基材に応じて異なることが示唆された。 粒子表面上に固定化したBHEの化学状態を解析することを目的に、BHEを固定化した各粒子に対しSi-L吸収端X線吸収分光(NEXAFS)測定を実施した。その結果、BHE固定化TiO2、BaTiO3およびBaTi2O5粒子のSi-L NEXAFSスペクトルは基材組成に応じて形状が変化しており、特にTiO2ではSiO2のスペクトルに形状が酷似していることがわかった。本研究で用いたBHEは、分子間縮合によりSi-O-Si結合ネットワークを形成し、基材表面上に固定化されると考えられている。したがって、基材組成に応じて分子間縮合の程度が異なることで、粒子表面への重合開始剤の被覆率に違いが生じていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブラシ形態の制御に基材表面と重合開始剤との界面相互作用が関与することが明らかとなり、粒子表面での分子の配置や結合を精密に設計したブラシ修飾への目途が立った。また、本研究課題に関する内容での招待講演など、成果が認められている。
|
今後の研究の推進方策 |
粒子表面での分子の配置や結合を精密に設計したブラシ修飾を施し、集合体である材料のマクロな物性との相関を定量的に評価する。そのため、X線吸収分光法により複合材料中に存在する異種・同種界面の相互作用を解析するとともに、X線散乱計測を用いてポリマーマトリクス中での高分子の絡み合い構造や成形時の粒子の動的挙動の追跡を試みる。得られた結果を基に、ポリマーブラシ修飾した機能性セラミックス粒子をポリマーマトリクスと複合化し、薄膜デバイスへ応用する。
|