研究課題/領域番号 |
18K04707
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
田中 将嗣 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (90597650)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 複合アニオン / 窒化ハロゲン化物 |
研究実績の概要 |
革新的な機能材料の創生のためには従来にない枠組みの物質設計が求められている。複数のアニオンを同一化合物中に含む「複合アニオン化合物」は酸化物や窒化物といった単アニオン化合物と比べて特異な配位構造や結晶構造が得られるため、そのような設計指針として近年注目されている。本研究はアンモニアおよび高圧力という特殊反応場を利用して複合アニオン化合物・窒化フッ化チタン(TiNF)「擬似酸化物」合成法を見出す研究を実施している。 2019年度は、前年度に確立した酸素混入の可能性を徹底して排除したアンモニア反応場と、新しく見出したナトリウムアミドを用いた低温窒化反応を利用し、層状窒化ハロゲン化物MNXの合成法を起点としたTiNF擬似酸化物の合成に着手した。フッ化チタンとアンモニアやその他の窒素源(NaN3、AlN、NH4Fなど)との反応で合成法の検討を行った。 また、再現よく合成できるようになった種々のMNX化合物に対して、そのインターカレーション化合物の超伝導発現機構解明に関する実験や、それらを出発物質として用いた窒化物合成実験も実施した。 これらに加えて、超高圧力下を用いた物質合成実験にも着手した。
擬似酸化物TiNFの合成には未だ成功していないが、ナトリウムアミドを使った合成法を応用すると、TiNClの窒素を15N同位体に100%エンリッチした化合物が合成できる方法を見出した。この同位体TiNClに、ナトリウムをインターカレーションして超伝導化し、その超伝導特性を調べ、発現機構解明のための実験を実施した。この結果、TiNClの超伝導機構は非従来型であることがわかり、今後の物性物理分野における研究が加速すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、確立したアンモニア反応場を用い、再現性よく合成することが可能となった層状窒化ハロゲン化物MNXを使った実験を行った。 また、この層状窒化ハロゲン化物合成法と、前年度見出したナトリウムアミドを用いた合成法を起点として窒化フッ化物の合成に着手した。 これらに加えて、超高圧力を使った物質合成実験にも着手し、原理検証を行った。 これらのことから当初の計画にあったとおりの進行状況であり、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に確立したアンモニア反応場を利用して、TiNF擬似酸化物の合成を継続する。ナトリウムアミドを用いた合成もさらに検討をすすめる。これらの方法では思ったような化合物が得られない場合には、高圧力・高温環境下での合成可能性も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費の一部が他の助成金でまかなえ、計画にわずかな変更が生じたため。 また、新型コロナウィルス蔓延防止に伴う措置により、予定していた出張がキャンセルとなったため。
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