研究課題/領域番号 |
18K04708
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山田 博俊 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (10359961)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イオン伝導体 / 粒界 / 単一粒界 |
研究実績の概要 |
リチウムイオン伝導体として,大気中での取り扱いが可能なNASICON型Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3 (LATP),および,ガーネット型固体電解質を選択した。固相法および錯体重合法により粒子サイズが数100 nm~数10 μmの,不純物がほとんどない試料を得た。固相焼結法および通電焼結法により焼結体を作製し,粒界の局所構造を精査した。また,焼結体に金電極をつけ,バルクでのイオン導電性の評価をそれぞれ行った。得られた焼結体の焼結密度は80%~95%であり,焼結体の結晶粒のサイズは数100 nm~数10 μmであった。イオン導電率は結晶粒径に対する依存性を示さず,焼結密度との間に強い相関がみられた。焼結密度が20%低下すると,イオン導電率は約1桁減少した。この原因を探るため,粒界近傍の構造をSTEM-EDS分析により精査した。不純物層の存在や元素の偏析は確認されず,粒界でのクラックが多くみられた。この粒界の割れの原因として,結晶構造由来のものと,焼結プロセス由来のものが考えられた。すなわち,結晶構造については,LATPは菱面体晶系で,温度に対する線膨張係数が結晶軸に対して異方性を示すため,粒界に大きなひずみが発生することで,割れが生じると考えられる。一方,通電焼結法で作製する試料は,粒界に大きなひずみが生じることで,割れが生じたと考えられる。これらの結果を確認するため,今後は単一粒界のイオン導電性測定を進める。 また,単一粒界での測定を行うために,光学系および測定系の整備を行った。光学系および測定系の分解能の関係から,焼結体の粒子サイズをさらに大きくする必要があり,100 μm程度の粒成長を実現するために,粒子のフラックス成長を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リチウムイオン伝導体として,大気中での取り扱いが可能なNASICON型Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3 (LATP)およびガーネット型固体電解質を選択した。固相法および錯体重合法により粒子を作製した。固相法では粒径10~30 μmの比較的大きな粒子を得た。またこれらの粒子を遊星型ボールミルで粉砕することにより,粒径約1~5 μmの粒子を得た。一方,錯体重合法では,粒径約100~200 nmの粒子を得た。X線回折により,これらの試料はいずれも不純物が少ないことを確認した。これらの粒子を用いて,それぞれ固相焼結法,通電焼結法により焼結体を作製した。得られた焼結体の粒界の局所構造をSEMおよびSTEM-EDSにより分析した。 一方,バルクのイオン導電率は,ペレット両面に金電極を形成し,交流インピーダンスを測定して求めた。局所構造とイオン導電率の相関を調べた。 また,単一粒界のイオン導電率の測定に向け,デジタルマイクロスコープ一式および電極作製用のマスクを導入し,評価を始めた。 以上,当初の予定通り計画が進んでいるため,おおむね順調に進展している,と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では,固体電解質の粒径が30 μm程度であるため,単一の粒上に電極を形成することや,マイクロスコープの観察下で作業することが困難である。粒径を50~100 μm程度に大きくし,精度が高い分析を可能とする必要がある。このため,粒成長を促進するために,フラックスを導入したり,長時間の熱処理を行う。また,併せて,より微小な粒界での観察を可能にするため,SEMでのマニピュレータの導入を進める。
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