研究課題/領域番号 |
18K04713
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
齋藤 美和 神奈川大学, 工学部, 助教 (60594215)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ペロブスカイト / プロトン / 水熱合成 |
研究実績の概要 |
酸素欠損ペロブスカイト型Ba(ZnxNb1-x)O3-d(d= (3x-1)/2)は、湿潤雰囲気下450℃付近において急激に電気伝導度が上昇し、典型的なプロトン伝導体とは異なる伝導挙動を示すことを見出している。この要因として、熱重量・脱離ガス分析により、試料が水を内包していることが確認され、この水から生成された水酸化物イオンが電気伝導度の上昇に寄与していることが示唆された。そこで、水熱合成法により試料を合成することにより、微粒子化による水酸化物イオン含有量の増大を期待した。 種々の原料と超純水を混合し酸性または塩基性を調整したスラリーをステンレス製圧力容器に入れ、種々の条件で水熱合成を行った。試料の評価として、粉末X線回折 (XRD) による相同定、SEM-EDXによる形態観察と元素分析、熱重量 (TG) 分析および四重極型質量分析計 (Q-MS) による脱離ガス分析を行い、赤外分光法 (FT-IR) により試料に内包する水酸化物イオンの化学結合状態を調べた。 240℃, 72時間の塩基性反応条件において、立方晶系ペロブスカイト型酸化物を主相とする生成物が得られた。SEM観察より、得られた生成物はナノ粒子の凝集体であることを確認した。TGおよびMS測定によりr.t.~200℃の重量減少は物理吸着水の脱離、200~600℃の2段階の重量減少は結晶格子中に取り込まれた水酸化物イオンの脱離、800℃以上の重量減少は不純物のBaCO3の分解に起因すると考察した。試料に内包する水酸化物イオンの化学結合状態を調べるため、加熱拡散反射法によるFT-IR測定を行った。約2500~3800 cm-1の範囲でO-H伸縮振動に由来するブロードなピークがみられ、ピークの形状が複雑であることから、異なる結合状態の化学種が試料中に存在していることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水熱合成法によるBa(ZnxNb1-x)O3-d(d= (3x-1)/2)の生成を確認したことが最大の成果である。酸性および塩基性条件下で種々の原料を用いた合成を網羅的に実施し、ペロブスカイト相が生成する条件を見出した。 また、比較試料として、同組成から構成され層状ペロブスカイト構造を有するBa5Nb4O15の水熱合成法による単一相合成にも成功している。Ba5Nb4O15はこれまで固相反応法や2段階の水熱合成法は報告されているが、本研究により1段階で合成可能となった。水熱合成法と固相反応法で合成したBa5Nb4O15のTGおよびMSより、固相反応法では水酸化物の含有が確認されなかったが、水熱合成法では多量の水由来の重量減少が観測されたため、合成時に水酸化物が含有されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.水熱合成法により得られた試料の電気伝導度評価 プロトンを主としたイオン伝導性およびイオン輸率の測定により、電気伝導度と水酸化物含有量との関係を調べる。 2、赤外分光法を用いた水酸化物の解析 表面物理吸着水、化学吸着水および試料中に内包した水酸化物の分離について、種々の温度や雰囲気条件のデータを収集し、学理の構築を目指す。 3、水酸化物イオン含有量の増大 水酸化物化を促進するため、合成時,前駆体または生成物の水酸化物化反応の最適化を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
水酸化物化反応に用いる簡易焼成装置を特注で導入した。 来年度は電気化学測定に必要な物品費を中心に使用し、成果報告の旅費および論文に関する支出を行う。
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