研究課題/領域番号 |
18K04715
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
菊川 直樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (00442731)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Sr2RuO4 / 高品質単結晶 / 超伝導対称性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,Sr2RuO4において近年われわれが見出した高磁場下での「新しい超伝導相」について,より深い知見を得ることである.それにより,Sr2RuO4の超伝導対称性の決定に結びつけることである.「新しい超伝導相」については,高品質な試料でのみ観測されている.しかも,当時は高品質性が保証されているのは小さな試料のみであり,包括的な研究をおこなうには困難な状況であった.2018年度では,まず,Sr2RuO4の高品質単結晶育成に取り組んだ.浮遊帯域法での育成中のパラメータの最適化はもちろんのこと,これまであまり注意されていなかった原料棒作製プロセスを見直した.従来のペレットを用いる方法を脱却することで,過程における不純物混入の抑制につながった.結果として,超伝導転移温度が理想的といえる1.50ケルビンに達する結晶を確率よく育成することができた.また結晶の質だけではなく,多くの物性測定が可能となる大きさにも達するようになった.結晶育成についてのこれらの成果を,京都大学と共同で論文にまとめ,出版した.また,低温での精密な物性測定を共同研究も含め展開を始めることができた.中でも2018年度の成果として,回転磁場下でかつ,60ミリケルビンまでの精密比熱測定に成功し,Sr2RuO4の超伝導ギャップについて示唆できる結果を得た.この結果についても論文発表をおこなった.今回の結果は今後,超伝導磁場-温度相図を包括的に理解する上で重要な知見となる.今後の研究を踏まえ,高品質単結晶のさらなる大型化とそれを用いた様々な精密な低温物性測定を展開し,真の超伝導状態の解明に向けて研究していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に達成しなければならない高品質単結晶の育成について,これまでの育成過程を見直した結果,今後の物性測定に可能となるサイズに達するの単結晶の高品質性,すなわち,超伝導転移温度が理想的な1.50ケルビンに達するようになったため.それを踏まえ,更なる大型高品質化への道筋が得られたため.さらに,得られた単結晶を用い共同研究を含む低温物性測定をおこなえるようになったため.
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今後の研究の推進方策 |
結晶育成については,今後の研究を踏まえ高品質な結晶をさらに大型化させることが重要となる.特に,「新しい相」の検出については,大型化が望ましい.これについてはすでにアイデアもあり,2019年度はそれを実施することで,目的を達成したい.さらに,そのような大型結晶でも精密な測定が可能な熱測定セルの開発が必要であり,現在も進めている.
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